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第 203 回 大気海洋物理系 B 棟コロキウム のおしらせ
日 時:2009年 10月 20日(火) 午後 16:30 〜 17:45
場 所:文系共同講義棟2番教室
発表者:坂崎 貴俊(大気海洋物理学・気候力学コース M2)
題 目:WINDAS、MUレーダーで明らかになった日本上空の対流圏〜下部成層圏の風の日変動
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WINDAS、MUレーダーで明らかになった日本上空の対流圏〜下部成層圏の風の日変 動(坂崎 貴俊) 発表要旨 :
対流圏の"風の日変動"と言えば、地表面付近で卓越する局地循環が注目されがち である。一方で、中・上層大気で卓越する大気潮汐や、対流圏界面付近で 卓越する中間規模波の影響も無視できないと考えられ、各季節・各高度領域で どのような現象が日変動を支配しているのかという問題は興味深い。ところが、 当高度領域の日変動は、近年まで適切な観測手法が存在しなかったこともあり、 その実態は(とくに中緯度においては)ほとんど明らかになっていない。 そこで本研究では、気象庁のウィンドプロファイラネットワーク(WINDAS) (日本全国31地点)および、京都大学所有のMUレーダー(滋賀県信楽町)の観測データ を用いて、対流圏〜下部成層圏の風の日変動の地理・高度・季節依存性、およ びその力学プロセスを明らかにすることを目的とする。観測高度はWINDASでは 高度0.3 km〜高度5 km(下部対流圏)、MUレーダーでは2km〜高度20km(対流圏〜 下部成層圏)である。データの期間はWINDASについては2002年4月〜2008年3月 の6年間、MUレーダーについては1986〜2008年の23年間である。これらのデー タをローカルタイムでコンポジットし、一日・半日周期の調和成分を抽出して、 各成分を別々に議論した。さらに、一日周期成分の結果の解釈には、気象庁メ ソ解析データ(MANAL)と全球再解析データ5種類(JRA25/JCDAS, ERA-Interim, ERA-40, NCEP1, NCEP2)を用いた。 まず半日周期成分については、高度1kmより上空においては半日潮汐 (うち太陽同期成分)が支配的であり、その振幅に明瞭な季節変化が存在する ことを初めて明らかにした。一方、高度1 km以下ではSakazaki and Fujiwara (2008) によって指摘された、局地循環の半日周期成分が支配的 であることがわかった。 続いて一日周期成分は、地上〜高度1kmでは、年間を通じて、局地循環 が卓越していた。 高度1--3kmでは、局地循環の反流に加えて、位相速度 15 m/s程度で東進する直径〜700 kmの渦(一日周期東進渦)が存在することを 発見し、両者の複合効果によって日変動が支配されていることがわかった。 さらに、高度3kmより上空では、冬−春には中間規模波が、夏−秋には 大気潮汐が卓越していることがわかった。 以上から、「対流圏〜下部成層圏の日変動は、季節・高度領域によって 少なくとも4種類の現象(局地循環、一日周期東進渦、中間規模波、大気潮汐) によって支配されている」という、下層大気日変動の新しい描像が得られた。
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