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第 195 回 大気海洋物理系 B 棟コロキウム のおしらせ

日 時:2007年 11月 13日(火) 午後 16:30 〜 19:00
場 所:地球環境科学研究科 A棟 講堂

発表者:元木 拓也 (大気海洋物理学・気候力学コース M2)
題 目:衛星ライダーを利用した熱帯対流圏界層(TTL)におけるシーラスの形成と脱水過程の研究

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衛星ライダーを利用した熱帯対流圏界層(TTL)におけるシーラスの形成と脱水過程の研究 (元木 拓也) 発表要旨 :

 成層圏の平均水蒸気量は4ppmv程度で,非常に乾燥していることが知られている。 
 その値は熱帯対流圏界面における脱水によって決定されているが、その過程は 
 十分に理解されていない。Holton and Gettelman [2001]は  
 TTL(tropical tropopause layer)内の西部太平洋などの低温域を大気が水平輸送 
 される際に、大気中の水蒸気が凝結、脱水されるというcold trap仮説を提唱した。 
 TTLとは熱帯対流圏界面を面として捉えるのではなく、対流圏的な性質から成層圏的 
 な性質に徐々に遷移する数kmの層として考える概念である。 
 TTL内に多く存在するsubvisible cirrusはこの脱水過程との対応が示唆されている。 
 レーザー光を大気中に照射し、分子やエアロゾルなどの散乱体からの後方散乱を観測 
 するライダーはこのようなシーラスを観測できる。Winker and Trepte [1998]は 
 スペースシャトル搭載ライダーLITE(Lidar In-space Technology Experiment)による 
 観測により、熱帯対流圏界面付近にシーラスが遍在することを報告した。 
 LITEの観測期間は1994年9月10日から19日である。 
 本研究では、このLITEによる観測データを用いてシーラスの形成と脱水過程の 
 関係について考察を行う。 
 解析に用いたLevel1データは、水平分解能が740mであり、鉛直分解能は15mである。 
 散乱強度が負の値をとる頻度に注目して、データの質の検討を行うと共に、 
 その頻度分布を描き、大気分子のレイリー散乱とシーラス粒子のミー散乱とを判別して、 
 シーラスを客観的に抽出する。 
 今後は、LITEの観測経路に沿って、後方流跡線解析を行い、シーラスの形成と温度履歴 
 について議論を行う予定である。  
  
  

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連絡先

山本 彬友 @北海道大学大学院環境科学院
地球圏環境科学専攻 / 大気海洋物理学・気候力学コース
mail-to:akitomo@ees.hokudai.ac.jp / Tel: 011-706-2288