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第 148 回 大気海洋物理系 B 棟コロキウム のおしらせ

日 時:2003年 11月 5日(水) 午後 17:00 〜 18:00
場 所:地球環境科学研究科 C棟 C104

発表者:三角 和弘 (気候モデリング講座 M2)
題 目:白亜紀などの温暖期の海洋深層・物質循環に関するモデルを用いた研究

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白亜紀などの温暖期の海洋深層・物質循環に関するモデルを用いた研究 (三角 和弘 ) 発表要旨 :

  
 白亜紀の中期(約1臆年前)は大気中の二酸化炭素濃度が現在の数倍から十
数倍程度あり非常に温暖な時期であったという事が知られている .またこの
時期には海洋無酸素事変と呼ばれる海洋中の有機物が分解されずにそのまま堆
積した時期があったことが知られている.このことは炭素循環に大きな変化が
あったことを意味しており,また,海洋無酸素事変のタイミングは生物種の入
れ替わりと同じタイミングでおこっていることから注目を集めている.

 海洋無酸素事変が起った原因としては主に次の二つの説が上げられている.
1.海洋生物の生産が高くなり有機物を分解しきれなくなりそのまま堆積した.
2.深層循環が停滞したために深層に酸素を供給できなくなったため,沈降有
機物を酸素を使って無機化することができなくなりそのまま堆積した.

 生物生産が高まるためには深層からの栄養塩の供給が不可欠であり,ある程
度循環が活発でないと起り得ない.つまり海洋の循環場がどのようになってい
たかがどちらの説が正しいかを判断する良い材料となるように思われる.

 堆積物中に残されている同位体などの記録から様々な研究がなされているが,
これら堆積物中の記録は物理的な循環についての記録を間接的にしか残してお
らず判断が難しい.

 一方でモデルを用いた研究でも境界条件として使えるような十分なデータが
ないために研究が困難になっており,栄養塩や酸素の循環についても計算でき
るモデルを用いた研究はほとんどない.

 そこで本研究では Oka et al.(2001) の簡易大気-海洋結合モデル(EBM +
OGCM)に,長波放射のパラメタリゼーション Caldeira and Kasting(1992) ,
物質循環モデル Yamanaka and Tajika(1996)を組み込みむことで,
・境界条件として太陽の放射だけで計算できる.
・温暖化した状況を再現できる.
・深層循環としてどのような場が起りうるかみることができる.
・深層循環が決まったときの物質循環の様子をみることができる.
という利点をもったモデルで計算をし,考察する予定であった.今回の発表で
は
・物質循環モデルの説明.
・現実の地形,海洋循環場での物質循環モデルの再現性.
・温暖化させた時の結合モデルの結果.
・AGCMを用いて温暖化させたときとの比較.
などについて話す予定である.


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連絡先

橋岡 豪人 @北海道大学大学院地球環境科学研究科
大気海洋圏環境科学専攻大循環力学 / 気候モデリング講座
mail-to:hashioka@ees.hokudai.ac.jp / Tel: 011-706-2298