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第 131 回 大気海洋物理系 B 棟コロキウム のおしらせ

日 時:2002年 1月 9日(水) 午後 16:30 〜 18:30
場 所:地球環境科学研究科 C棟 C104

発表者:羽角 博康 (東大CCSR)
題 目:大気による海盆間淡水輸送とべーリング海峡通過流に対する全球規模熱塩循環の依存性

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大気による海盆間淡水輸送とべーリング海峡通過流に対する全球規模熱塩循環の依存性 (羽角 博康) 発表要旨 :

  
 海面における淡水収支は海洋の熱塩循環の駆動要素として重要である。現在の 
 気候においては大西洋が全体として淡水を失っているのに対し、太平洋は淡水を 
 獲得している。これは大西洋の塩分を太平洋よりも高める働きをし、現在のよう 
 な北大西洋北部で深層水形成を伴うという全球規模熱塩循環を実現しやすくして 
 いる。一方、この淡水収支は太平洋の水位を大西洋よりも高く保つことに寄与し、 
 その結果として北部北太平洋表層の低塩分水がべーリング海峡を通して大西洋へ 
 運ばれる。これは北大西洋北部での深層水形成を弱める方向に働く。淡水収支に 
 変化が生じた場合、ここに挙げたふたつの効果は全球規模熱塩循環に対して逆向 
 きに働くと考えられるが、その詳細に関してはあまり研究されていない。 
  
   地球温暖化をはじめとする長期的な気候変動の問題においては全球規模熱塩循 
 環の応答が重要視されており、特に大気の淡水輸送の変化に対してそれがどのよ 
 うに振舞うかが気候の状態を大きく左右する。また一方で、現在の海面淡水収支 
 の観測的見積りには不確定性が大きく、その意味からも海面淡水収支と海洋熱塩 
 循環がどのように対応しているのかに関しては不明な点が多い。したがって、気 
 候の状態形成や長期変動の物理的理解のためには、海面淡水収支に対する全球規 
 模熱塩循環の依存性を把握する必要がある。 
  
   こうした背景のもと、大気による海盆間淡水輸送の変化に対す全球規模熱塩循 
 環の応答とそこにおけるべーリング海峡通過流の働きを調べる目的で行なった海 
 洋大循環モデルによる実験結果について紹介する。 
   

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連絡先

江川 晋子 / 稲津 將 @北海道大学大学院地球環境科学研究科
大気海洋圏環境科学専攻大循環力学 / 気候モデリング講座
mail-to:egawa@ees.hokudai.ac.jp / Tel: 011-706-2298