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第5回 大気海洋物理系 B 棟コロキウムのお知らせ

日 時:1998年 6月 1日(月) 午後 5:00 〜 7:00
場 所:地球環境科学研究科 管理棟 2F 講義室

発表者:岡田 直資 (気候モデリング講座 D2)
題 目:部分的に海氷に覆われた海域における対流の数値実験

※ 今回は開始時刻が通常と異なります. ご注意下さい.
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発表要旨:

グリーンランド海や地中海で、開水面で表層から深層まで達する鉛直対流 (open ocean deep convection) が起きる際に、plume と呼ばれる水平方向に 細胞状の構造を持った下降流と上昇流が生じることが観測されている。 1 つ の細胞の大きさは 1 km 程度である(Schott and Leaman, 1991)。 一方、部分 的に海氷に覆われた海域に大気からの冷却が加わると、海氷に覆われた部分よ りも覆われていない部分で、より速く海氷が生成され、より多くのブラインが 排出される。この場合、open ocean deep convection と比較して、水平方向 に非均一な負の浮力フラックスが海洋表層に加わる。また、海氷が移動すると、 浮力フラックスが加わる場所が移動する。浮力フラックスが加わる領域の面積 や、フラックスが一定であっても、このような領域の分布の違いや移動の有無 によって、生成される高密度水の密度が異なる可能性がある。特に、浮力フラッ クスが加わる領域の構造の水平スケールが plume の大きさと近い場合、 対流 過程が open ocean deep convection の場合と異なることが予想される。そこ で、非静水圧 3 次元モデルを用いて数値実験を行い、このような状況での対 流過程について調べた。

実験では、以下のように浮力フラックスの与え方を変えた。

1. 浮力フラックスを与える領域の大きさを変える。

2. 与える浮力フラックスの総和を変えずに、与える領域の分布を変える。

3. 浮力フラックスを与える領域を動かす。

実験の結果、以下のことが分かった。

1. 浮力フラックスを加える領域の大きさが plume より大きい場合と小さい場 合で、対流の様子が全く異なる。

2. 浮力フラックスを加える領域が大きいはど、重い水の生成量が多い。

3. 浮力フラックスを加える領域の分布を変えた場合、その領域がモデル中で 集中しているほど、重い水の生成量が多い。

4. 浮力フラックスを加える領域が移動した場合、重い水の生成量が少ない。

今回の実験によって、ブラインの排出によってできる高密度水の密度は、1つ 1 つの開水面(ポリニアやリード)の大きさに依存することが示唆された。これ は、グリッドサイズが数十 km 以上の静水圧モデルで、ブラインの排出による 水塊形成をパラメタライズするためには、海氷密接度だけではなく、リードや ポリニアの大きさの情報も必要だということを示している。

※ 次週 6/8(月) の予定.

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連絡先

岡田直資 / 谷口 博 @北海道大学大学院地球環境科学研究科
大気海洋圏環境科学専攻気候モデリング講座

mail-to:taniro@ees.hokudai.ac.jp / Tel : 011-706-2372