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第11回 大気海洋物理系 B 棟コロキウムのお知らせ

日 時:1998年 8月 31日(月) 午後 4:30 〜 6:30
場 所:地球環境科学研究科 管理棟 2F 講義室

発表者:能登 正幸 (気候モデリング講座 D2)
題 目:黒潮続流域の海面水温を用いたマイワシ資源変動モデル

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発表要旨:

1988年以降のマイワシ資源の減少は,仔稚魚期から1歳魚までの生残に原因が あるという可能性が指摘されている(Watanabe et. al, 1995). 我々は,その期間の回遊分布域と考えられる黒潮続流域の海面水温(SST)が平 年値より高い年で自然死亡係数が高い(生残が悪い)という関係を見い出し,こ の関係を利用すれば約1年前に満1歳魚量が予測可能であることを示した(Noto and Yasuda, 1998).また,過去50年間のSST時系列が漁獲量変動と位相が一致 していることから,長周期的な資源変動も続流域のSSTから推定可能と考えら れる.そこで本研究では,経験的に得られたSSTと死亡係数との関係を用いた 単純な資源変動モデルを作成し,過去の漁獲量変動との比較を行なった.

その結果,1950年以降の資源の高水準期間(1980年代)とその増減の仕方に一致 が見られた.しかしながら,以上の解析では,1950年以降のみ,つまり資源変 動周期としては1周期分のみであることから,周期性については何も言えない. そこで,1899年からgrid化され納められているSLPデータを使用し同じ手法で モデル解析を行なった.ただし,SLPとSSTとの間には,統計的に冬季の続流域 のSSTが高い年にシベリア上空では平年より気圧が低く,北太平洋上では平年 より気圧が高いという関係があり,その結果を利用している.モデルの結果, 1905年以降のマイワシ資源の変動を良く再現できることがわかった.以上から, マイワシ資源の長周期変動は特定の時期に特定の海域の海洋環境変動に強く依 存していることが示唆される.

今後は,続流域のSSTの経年変動のメカニズムを大気,海洋両方面から探ると 共に,Yasuda et al. (1998)によって報告されたマイワシ豊凶周期と北米の気 温との関係が,続流域のSST変動とどのような関係があるかを調べ,1600年以 降のマイワシの豊凶を今回作成された資源変動モデルで再現できるかどうかを 調べたいと考えている.

# 後期第1回の発表です. 9月下旬からは M2 中間発表を中心に行ないます.

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連絡先

岡田直資 / 谷口 博 @北海道大学大学院地球環境科学研究科
大気海洋圏環境科学専攻気候モデリング講座

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