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第366回 大気海洋物理学・気候力学セミナー のおしらせ

日 時:12月08日 (木) 9:30 - 12:00
Date :Thu, 08 Dec. 9:30 - 12:00
場所:低温科学研究所 3階 講堂
Place :Institute of Low Temperature Science, 3F, Auditorium

発表者:久住空広(東京大学)
Speaker:Takahiro Kusumi (University of Tokyo, D2)
題目:赤道を横切る西岸境界流の離岸に伴う高気圧性渦について­
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発表者:寺田雄亮 (東京大学)
Speaker:Yusuke Terada (University of Tokyo, D1)
題目:西太平洋における赤道中層海流の駆動源 ­

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赤道を横切る西岸境界流の離岸に伴う高気圧性渦について
久住空広(東京大学)
発表要旨:

ソマリア海流系は北半球夏季の西部アラビア海に現れる海流系であり、北西向き の西岸境界流であるソマリア海流と二つの高気圧性渦であるSouthernGyre(SG)、 GreatWhirl(GW)で構成される。二つの高気圧性渦のうちSGの北側の沖向き流れ は慣性流ジェットの離岸として解釈されるが、その北側に位置するGWの形成過程 の理解は十分ではない。この問題について調べるために領域海洋モデルを用いて 風応力強制が慣性流ジェットの離岸緯度とおおよそ等しい実験(Sgy5)と風応力 強制がより北側に及ぶ実験(Sgy9)を行った。Sgy5実験では定常的な西岸境界流 が風応力強制、1.5層の慣性流ジェットの理論から予測される離岸緯度とおおよ そ等しい緯度で離岸した一方、Sgy9実験では慣性流ジェットの理論から予測され る西岸境界流の離岸位置から北向きに渦の周期的な放出が起こった。非線形性が あるにもかかわらずこれらの渦の流れによって循環は線形解に近い分布となった。 西部アラビア海のGWはSgy9実験の渦と同様に慣性流ジェットの離岸緯度より北側 にある風応力強制に対する応答で生じていると考えられる。

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西太平洋における赤道中層海流の駆動源
寺田雄亮 (東京大学)
発表要旨:

赤道中層深さ500-2000mには複数の東西ジェットが連なって存在することが知ら れており、近年観測からその特徴的な空間構造が明らかになりつつある。特に太 平洋と太平洋ではジェットが南北方向に連なるEquatorial Intermediate Currentsと、ジェットが向きを変えながら鉛直方向に連なるEquatorial Deep Jetsの二種類が存在しており、これらの形成について様々な議論が行われてきた。 これまでの研究から赤道中層ジェットの形成メカニズムとして、Yanai波に代表 される季節内変動が三波共鳴等を通してジェットにエネルギーを供給し循環を維 持するとされ、季節内変動は表層海流の不安定からもたらされると考えられてい る。このような赤道中層ジェットの形成メカニズムは、表層赤道海流の不安定が 顕著な大西洋、東太平洋では有効であると予想される。一方で赤道太平洋の西部 では表層海流の不安定は顕著でなく、また中層で観測される季節内変動が特定の 経度帯に偏在していることから、既存のシナリオでは中層ジェットへのエネルギ ー供給を説明することができない。 そこで本研究では西太平洋中層の季節内変動をもたらす原因を明らかにするため、 観測データの解析と数値実験を実施した。熱帯西太平洋に設置されたTRITONブイ 観測の解析と数値実験の結果は約50日周期のYanai波が下向き・東向きに伝播す ることを示唆している。

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連絡先

川島 正行
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