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第361回 大気海洋物理学・気候力学セミナー のおしらせ

日 時:4月28日 (木) 9:30 - 12:00
Date :Thu., 28 Apr 9:30 - 12:00
場所:環境科学院 D201室
Place :Env. Sci. Bldg. D201

発表者:久賀みづき(低温研・海洋・海氷動態分野/博士研究員)
Speaker:Mizuki Kuga (ILTS/Post doctoral fellow)
題目:オホーツク海南西部で春季ブルームを引き起こす海氷の起源­
発表者:松田拓朗 (低温研・環オホーツク研究センター/学振特別研究員)
Speaker:Takuro Matsuta (ILTS/ JSPS research fellowship for young scientist)
題目:南極周極流における渦・平均流相互作用の空間非一様性­
Title:Spatial heterogeneity of eddy-mean flow interactions in the Antarctic Circumpolar Current­

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オホーツク海南西部で春季ブルームを引き起こす海氷の起源
久賀みづき(低温研・海洋・海氷動態分野/博士研究員)
発表要旨:

オホーツク海南西部では, 海氷融解後に植物プランクトンの春季ブルームが発生 する. 海氷の融解域では特に生物生産が大きくなることがプロファイリングフロ ートによる観測から示された(Kishi et al. 2021). この顕著な春季ブルームの 原因が海氷に含まれた堆積物由来の鉄であることがKanna et al. (2018)から示 唆される. さらに, Ito et al. (2017)によって, サハリンの陸棚上の沿岸ポリ ニヤにおいてフラジルアイスの生成と同時に堆積物が巻き上がることで海氷に堆 積物が取り込まれ得ることが示された. これらの先行研究から, 沿岸ポリニヤで 生成された海氷がオホーツク海南西部に輸送され, 融解し, 鉄を放出することで 顕著な春季ブルームを起こすというシナリオが提案されている. 本研究では, こ の仮説を検証し, 顕著なブルームを発生させるのがどこで生成された海氷なのか を明らかにするために, 粒子追跡法による沿岸海氷の輸送シミュレーションを行 った. その結果, 千島海盆西部において融解する海氷の大部分はテルペニア湾・ サハリンポリニヤを起源とすることが示された. また, 海氷融解後に高生物生産 となる領域とこれらのポリニヤ起源の海氷融解域がよく対応していた. フラジル アイスにより生成された海氷の輸送シミュレーションからは, フラジルアイスの 発生頻度が高いテルペニア湾ポリニヤを起源とする海氷融解の重要性が示唆され た. これらの結果は前述の仮説を支持するものである.

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南極周極流における渦・平均流相互作用の空間非一様性
Spatial heterogeneity of eddy-mean flow interactions in the Antarctic Circumpolar Current
松田拓朗 (低温研・環オホーツク研究センター/学振特別研究員)
発表要旨:

南極周極流は東西方向に境界を持たない唯一のジェットで、海盆間のトレーサー 交換において重要な役割を果たしている。また、子午面循環の非断熱的な湧昇域 としても知られており、全球規模の気候変動・気候変化を理解する上でも極めて 重要である。このような重要性から、南極周極流は東西方向に境界を持たない東 西一様なジェットとして理想化され、外力の変化に対してどのように応答するか 多くの研究が為されてきた。それらの研究結果から、傾圧不安定により発生する 中規模渦が、南極周極流の振る舞いに影響を与えることが示唆されている。  しかし、近年の研究から、ドレイク海峡などの顕著な地形との相互作用により、 南極周極流の振る舞いや外力への応答は東西方向に非一様である可能性が指摘さ れている。また、南極周極流の非一様な渦活動と大気のストームトラック(渦活 動)との類似点が示唆されている。本発表では、高解像度海洋大循環モデルOFES に基づき、南極周極流の東西非一様性を論じる。特に、南極周極流の渦活動と大 気の渦活動の類似点と相違点を明らかにし、その物理的背景について論じる。

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連絡先

川島 正行
mail-to: kawashima__at__lowtem.hokudai.ac.jp
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