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第337回 大気海洋物理学・気候力学セミナー のおしらせ

日 時:7月30日 (木) 09:30 - 12:00
Date :Thu., 30 Jul. 09:30 - 12:00
ツール:Zoom (Online)
Tool :Zoom (Online)

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発表者:長谷川 拓也(学術研究員)
Speaker:Takuya HASEGAWA (Postdoctoral Researcher)
題目:北海道南東岸沖における海洋中規模渦が海底圧力変動に与える影響に関する流体系・固体系分野横断型研究
Title:An interdisciplinary study among ocean fluid science and solid earth science on the effect of ocean mesoscale eddies on ocean bottom pressure changes off the southeastern coast of Hokkaido

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北海道南東岸沖における海洋中規模渦が海底圧力変動に与える影響に関する流体系・固体系分野横断型研究
An interdisciplinary study among ocean fluid science and solid earth science on the effect of ocean mesoscale eddies on ocean bottom pressure changes off the southeastern coast of Hokkaido
長谷川 拓也 (Takuya HASEGAWA) 発表要旨:

流体系・固体系分野横断型研究の一環として、北海道南東岸沖に見られる海洋中 規模渦の一種である暖水塊(Warm Core Ring: 以下、"WCR”)に着目して、 WCRに伴う海面高度変化および海水密度変化が海底圧力に与える影響について、 現場観測データや高解像度海洋同化データを用いて解析を行った。 最近の研究から、大規模な海底地震発生にさきがけて、1年より長い時間スケール (年々スケール)を有する「長期的ゆっくりすべり」と呼ばれる海底地殻変動が 見られることが指摘されている。海底地殻変動は海底圧力センサーによって観測 されているが、海底圧力データには地殻変動のみならず流体変動による圧力変化も 含まれている。すなわち、地殻変動由来の圧力変動成分をより正確に抽出するため には、流体変動由来の圧力変動成分を圧力データから除去する必要がある。 本研究では、北海道南東岸沖に設置された2基の海底圧力センサー (PG1およびPG2)から得られた海底圧力の年々スケール偏差に対して時系 列解析を行い、2004年から2013年の解析期間中、2007年において両者が異なる 振る舞いを示すことを指摘した。2007年においては、PG1の海底圧力偏差は海面 高度偏差と連動して正の偏差を示していたが、PG2の海底圧力偏差は海面高度偏差 と連動しておらず偏差はほぼゼロであった。この理由を探るために、PG2の近傍で 実施されている繰り返し船舶観測ライン(A-line)のCTDデータを解析した。 2007年1月におけるポテンシャル密度の南北断面図から、この期間において レンズ状の傾圧的構造を示すWCRがPG2の近くに存在することが示された。 次に、WCRが関係する密度変化が海底圧力変化に与える影響について評価する ために、Geoptential Distanse (GPD)をA-lineのCTDデータから計算した。 その結果、WCRが関係する密度変化は海底圧力を0.3 dbar減少させる効果を持つ ことが示された。この効果は、2007年の海面高度偏差が海底圧力に与える効果 (0.06 dbarの増加)を相殺し得る。以上の結果から、傾圧的なWCRの存在に よって、PG2の海底圧力偏差が海面高度偏差と連動しなかった可能性がある。 さらに、高解像度海洋同化データ(JCOPE2M)の解析を行い、北海道南東岸沖 において海洋流体変化が海底圧力変化に与える効果(海面高度変化と海水密度 変化が海底圧力変化に与える効果の和)が、-0.025 dbarから+0.025 dbarの範囲 であることを示した。長期的ゆっくりすべりは1 cm (海底圧力に換算すると 0.01 dbar)のオーダーの地殻変動を伴うので、海底圧力データから長期的ゆっくり すべりに関係する地殻変動成分をより良く抽出するためには、海面高度に くわえて海水密度も考慮して海洋流体変化が海底圧力変化に与える影響を評価する 必要があることが本研究から示された。

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連絡先

中山 佳洋
mail-to: Yoshihiro.Nakayama__at__lowtem.hokudai.ac.jp
※ __at__ は @ に置き換えて下さい。