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第335回 大気海洋物理学・気候力学セミナー のおしらせ

日 時:5月28日 (木) 09:30 - 12:00
Date :Thu., 28 May. 09:30 - 12:00
ツール:Zoom (Online)
Tool :Zoom (Online)

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発表者:堀之内 武(地球環境科学研究院/准教授)
Speaker:Takeshi Horinouchi (Faculty of Environmental Earth Science/Associate Professor)
題目:「あかつき」による金星大気の超回転の研究
Title:Superrotation of Venus' atmosphere studied with Akatsuki

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「あかつき」による金星大気の超回転の研究
Superrotation of Venus' atmosphere studied with Akatsuki
堀之内 武 (Takeshi Horinouchi) 発表要旨:

金星の自転は地球に比べると非常に遅く,周期は243日,向きは地球と逆の西 向きである。その大気は,全球的に自転と同じ向きにより速く流れている。風 速は地表付近から徐々に増大し,高度約50-70 kmに存在する雲層の上端付近で 最大になるが,そこでは約4日で一周する高速回転になっている。このため幅 広い緯度帯で,単位質量当たりの自転軸周りの角運動量が,赤道地表面のそれ を上回っており,超回転(スーパーローテーション)と呼ばれる。この状態が いかにして生じ,維持されているかは,発見以来半世紀以上にわたって注目さ れてきた。これまでにいくつか理論が提案され,近年は大気大循環モデルによ る再現も増えた。しかし,重要なプロセスがモデルによって異なり,観測によ る制約はないに等しい状況であった。 発表者を中心とするグループは,超回転の維持機構の問題に,金星探査機「あ かつき」の観測データを用いて取り組んだ。「あかつき」は,金星の気象衛星 とも呼ぶべき人工衛星で,その最大の目的は超回転の解明であった。2010年の 軌道投入の失敗の後,2015年12月に成功し,現在も観測を続けている。我々は, あかつきによる紫外線画像を用い雲を追跡することで風速を推定した。このよ うな雲追跡は,以前の探査機でも行われたが,独自の技術革新により,従来手 法をはるかに上回る精度,密度で実施でき,さらに誤差を推定することも可能 になった。これにより雲頂付近での角運動量収支を見積もった。結果は,熱潮 汐波の重要性を示唆するものであった。また,従来の有力な理論では超回転実 現の助けとなると考えられてきた,大規模な乱流や潮汐以外の波動は,超回転 のピークにおいてむしろその逆に働いていることが明らかになった。 なお,本研究は最近論文出版されました: * 本文: https://science.sciencemag.org/content/368/6489/405/ * 付録: https://science.sciencemag.org/highwire/filestream/743672/field_highwire_adjunct_files/0/aaz4439_Horinouchi_SM.pdf

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連絡先

中山 佳洋
mail-to: Yoshihiro.Nakayama__at__lowtem.hokudai.ac.jp
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