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第327回 大気海洋物理学・気候力学セミナー のおしらせ

日 時: 9月19日(木) 15:30 - 17:00
Date : Thu., 19 Sep. 15:30 − 17:00
場 所: 環境科学院D201室
Place : Env. Sci. Bldg. D201

発表者:青木周司 (東北大学大学院理学研究科 教授)
Speaker:Shuji Aoki (Graduate Schools Science, University of Tohoku / Professor)
題目:濃度と同位体比から推定した全球のメタン濃度変動の要因について


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濃度と同位体比から推定した全球のメタン濃度変動の要因について 青木周司 発表要旨:

 大気中のメタン(CH4)濃度は、人間活動によって過去200年間に急激に上昇し、 現在では産業革命以前の値の2倍を越え、少なくとも過去80万年間には見られな かったほどの高いレベルにまで達している。このためCH4は、地球温暖化にとって 二酸化炭素(CO2)に次いで重要な温室効果気体と言われている。産業革命以降の CH4濃度の急激な上昇は、主に水田耕作面積の増加や、牛・羊といった反芻動物の 飼育頭数の増加、石炭・天然ガス採掘量増大にともなうCH4漏洩量の増加など、人 口増加に伴う人為的CH4放出源の拡大によるものと考えられてきた。ところが、近 年の大気観測によると、CH4濃度の上昇傾向は1990年以降徐々に鈍化し、1999年 から2007年までは上昇がほぼ停止したことが専門家の間で大きな話題となった。さ らにその後の観測結果を見ると、CH4濃度は再び増えはじめ、現在も上昇し続けて いる。  CH4濃度のこのような奇妙な経年変化は、従来の知見だけでは説明することが困 難であり、今後CH4濃度がどうなっていくかを予測することはたいへん難しい問題 になっている。これまでの氷床コア解析によれば、大気中のCH4濃度は氷河期には 低く、間氷期には高くなっており、地球の気温と完全に同期した変動を繰り返して きたことが明らかにされている。このため、今後地球が温暖化するにつれて自然界 のCH4放出源が強まり、濃度上昇が今後も続く可能性が高いと考えられる。それで は、今後どのようなペースでCH4濃度上昇が起こるだろうか。この問いに答えるこ とは、今後の地球温暖化の予測にとって極めて重要である。そのためにはCH4の人 為起源および自然起源の放出源や消滅源に関する現在の知識をさらに深め、地球規 模でのCH4循環を正確に定量化する必要がある。本セミナーでは、地球規模におけ るCH4濃度の変動とその要因について、我々の最新の研究から得られた成果を報告 する。

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