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第304回 大気海洋物理学・気候力学セミナー のおしらせ

日 時: 11月30日(木) 9:30 - 12:00
Date : Thu., 30 Nov. 9:30 - 12:00
場 所: 低温科学研究所 3階 講堂
Place : ILTS, Auditorium

発表者:張 偉 (低温科学研究所/博士研究員)
Speaker:Zhang Wei (Institute of Low Temperature Science/PD)
題目:短波海洋レーダを用いた流氷観測番外編 -海洋レーダ数値シミュレーション-
Title:SeaSonde HF Radar Simulation for Sea Ice Mapping
発表者:唐木 達郎 (大気海洋物理学・気候力学コース/D3)
Speaker:Tatsuro Karaki (Course in Atmosphere-Ocean and Climate Dynamics/D3)
題目:夏季の宗谷暖流の調節過程~底流と調節スケール~
Title:Buoyancy shutdown process for an adjustment of the Soya Warm Current during summer: Bottom Flow and Shutdown Scale

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SeaSonde HF Radar Simulation for Sea Ice Mapping 張 偉 (Zhang Wei) 発表要旨:

短波海洋レーダは陸上に機器を設置し、電波を発信・その反射エコーを 受信・処理し、複数局の解析結果データを合成する事により、海の表層 の流況(流向・流速)を沖合100km程度までの海面に取得する事ができる リモートセンシング技術を利用した観測機器である。現在短波海洋レーダ は広域の流れや、波浪を伴う海洋環境情報など様々な分野での利活用が 可能である。宗谷暖流を観測するために、北海道大学低温科学研究所では 2003年秋に北海道の北部海岸で短波海洋レーダシステムを完成させた。 中には、紋別市海岸周辺に海洋レーダより、 非常によい感度で流氷エコー の受信ができる。そして、前回我々は海洋レーダを用いて流氷観測技術の 開発を試みた。海洋レーダに通じて求めた海氷のデータとADCP・漂流ブイ の海氷観測と比べた結果、流速は比較的に高い一致性が得られた。さらに、 C-バンド流氷レーダとの比較を通して、海洋レーダは海氷辺縁の分布を観測 するのに極めて有力な装置である。海洋レーダはMUSIC法を用いた流氷電波 到来方向推定する。しかし、海洋レーダが流氷の到来方向(DOA)の精度に 推定する観測実験的に関わる検証ができない。本課題は流氷計測した海洋 レーダ数値シミュレーションの開発を試みて、海洋レーダの数値シミュ レーションで流氷の流氷信号対雑音比(SNR)により、MUSIC法を用いた 流氷位置の推定精度を検討すること目的となる。

夏季の宗谷暖流の調節過程~底流と調節スケール~ 唐木 達郎(Tatsuro Karaki) 発表要旨:

夏季の宗谷暖流(北海道北東沿岸の沿岸流)は、宗谷海峡で順圧的に強制され (Ohshima 1994; Aota et al., 1989)、その下流域で傾圧構造を形成する (e.g., Matsuyama et al., 2006)。この順圧構造から傾圧構造への変遷は、 海底エクマン輸送によって季節躍層が沖向きに傾くこと(i.e., buoyancy shutdown process)で生じることを我々は示した。しかし、以下の2つの問題が 残っている。1) なぜ、宗谷暖流は下流域で充分な大きさの底流を有するのか (e.g., Aota 1975)? 2) これまでの理論のshutdown scale(構造が変化するため に必要な流下方向の距離スケール)は、宗谷暖流の調節スケールを評価できるか? この2つの疑問に回答するために、シンプルモデルを構築し、理想化した数値 実験を行った。その結果、下流域の宗谷暖流の底流を強制力は、傾圧不安定に 伴うForm Dragであることが分かった。また、Shutdown Scaleを定量的に評価する ためには、海底境界層の発達に伴う応力と、流下方向の移流の効果を含める必要が あることが分かった。この研究によって、稚内-網走の水位差と海底摩擦の釣り 合い(Aota 1975)が、夏季の宗谷暖流で成立しないことが決定的になった。また、 従来のShutdown Scaleは宗谷暖流のスケールを過小評価することも結論付けられた。

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連絡先

平野 大輔(Daisuke Hirano)
mail-to: hirano@lowtem.hokudai.ac.jp