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第301回 大気海洋物理学・気候力学セミナー のおしらせ

日 時: 9月25日(水) 14:45 - 16:15
Date : Wed., 25 Sep. 2:45 - 4:15 p.m.
場 所: 環境科学院 D201室
Place : Env. Sci. Bldg. D201

発表者:筆保弘徳(横浜国立大学 教育学部)
Speaker:Hironori Fudeyasu (Yokohama National University)
題目:気候変動予測の不確実性と誤差の低減に向けて
Title:Toward reducing uncertainties and errors in climate projections and predictions

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台風発生メカニズム ~メソスケールプロセスと大規模場コントロール~ 筆保弘徳 (Hironori Fudeyasu) 発表要旨:

<テーマ1:メソスケールの組織化プロセス> 本講演では、これまでの台風発生メカニズムの研究をレビューし、講演者らによる NICAMを用いた研究で示した、段階的に起きるメソスケールの組織化プロセスを 紹介する。発生プロセスの第1段階は、発生に好都合な大規模環境場で (プレコンディショニング)、メソスケールの渦(MCV)と対流スケールの渦 (VHT) が発生し、両者が相互作用をしながら(MCV の軸対称化と複数のVHTのmerge) VHTを中心とした軸対称構造を持つ初期渦が形成する。第2段階では、初期渦の中心 に発生した暖気核に対応した軸対称のながれ(二次循環)が発生し、周囲の絶対角 運動量を中心へ輸送して初期渦の水平スケールを拡大する(システムスケール発達 プロセス)。この段階的な組織化プロセスが数日かけて持続し(大規模場コントロ ール)、初期渦が台風スケールの強度とサイズにまで達して台風発生となる。 <テーマ2:大規模発生環境場の統計解析 ~発生時の環境は台風にどう影響するのか?~> 台風は、ある特定の大規模環境場のなかでメソスケールの組織化プロセスが働き、 台風構造が形成される。北西太平洋の台風発生をもたらす大規模環境場には、決 まったパターンがあることは古くから知られている。Ritchie andHolland(1999) は、対流圏下層のモンスーン西風と偏東風による水平風シアライン、東西風の合 流域、モンスーンジャイア内、偏東風波動に伴う擾乱、先行台風により形成され るロスビー渦列の5パターンに大規模環境場を分類した。Yoshida and Ishikawa (2013)は、その統計結果を基にして発生環境場の客観的診断法を開発した。 講演者らは、その診断法で得られた発生環境場パターンの台風の特徴を調べて、 誕生した時の環境場パターンの違いで台風がどういった特徴を持つのか、さらに その”生まれつき”は将来どこまで影響をするのかを調べた。また、気象庁が 作成している早期ドボラック法(EDA)のデータを用いて、台風になれそうで なれなかった熱帯擾乱の割合も調べて、メソスケールの組織化プロセスに 適している・適していない環境場(大規模場コントロール)も明らかにした。

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連絡先

平野 大輔(Daisuke Hirano)
mail-to: hirano@lowtem.hokudai.ac.jp