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第287回 大気海洋物理学・気候力学セミナー のおしらせ

日 時: 10月 13日(木) 9:30 - 12:00
場 所: 低温科学研究所 3階 講堂

発表者: 伊藤 優人(大気海洋物理学・気候力学コース/D3)
Speaker:Masato Ito (Course in Atmospheric-Ocean and Climate Dynamics/D3)
題名:南極ケープダンレー沖におけるフラジルアイス生成
Underwater frazil ice and supercooled water observed off Cape Darnley

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南極ケープダンレー沖におけるフラジルアイス生成 (伊藤 優人、Masato Ito) 発表要旨:

海氷は極域海洋の表面熱収支、塩収支、高密度水形成、物質循環、海洋生物の生態系に強 く寄与する。厚い海氷は大気ー海洋間の熱フラックスを弱める断熱材となるため、海氷域 内の薄氷・疎氷域である沿岸ポリニヤにおいて海氷生産は大きくなる。沿岸ポリニヤにお ける海氷の生成に関して、静穏な環境下では海面での板氷の生成・成長が卓越し、海が氷 に覆われる(熱損失が阻害される)一方で、擾乱環境下では、フラジルアイス・グリース アイスと呼ばれる粒状の氷の生成が卓越し、大きな熱損失が維持される。特に後者につ いて、過冷却が生じ、海中でのフラジルアイス生成が持続する過程は、開放水面が長期間 に渡り維持されるため、最も効率のよい海氷生産過程となり得る。しかしながら、極域海 洋での観測が難しいこと、過冷却の大きさが測器の測定精度と同程度であること、海中の フラジルアイス(微粒子)を検知する方法が確立されていないことなどから、ポリニヤで の過冷却水やフラジルアイスの現場観測例が非常に少なく、この過程が実現するのかさえ 良く分かっていない。近年、ADCPが取得する音波の後方散乱強度を利用して海中のフラ ジルアイスを検知できる可能性が明らかとなってきた。そこで、北極バロー沖、オホーツ ク海サハリン沖および南極ケープダンレー沖での係留観測によって得られたADCPデータ の解析から、海中でのフラジルアイス生成を伴う海氷生成を調べた。その結果、各海域に 過冷却を伴う海中でのフラジルアイス生成が生じている可能性が明らかとなってきた。 そのなかで、今回のセミナーでは、南極ケープダンレー沖に関する結果を速報的に発表 する。

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連絡先

川島正行 (Masayuki Kawashima)
mail-to: kawasima@lowtem.hokudai.ac.jp