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第281回 大気海洋物理学・気候力学セミナー のおしらせ

日 時: 4月 21日(木) 午前 09:30
場 所: 環境科学院 2階 D201

発表者: 田村岳史(国立極地研究所/助教)
Takeshi Tamura (National Institute of Polar Research/Assistant professor)
題名: ROBOTICA(氷床・海洋相互作用の現場観測プロジェクト)の紹介
ROBOTICA : Research of Ocean-ice BOundary InTeraction and Change around Antarctica

発表者: 中村知裕(低温科学研究所/講師)
Tomohiro Nakamura (Institute of Low Temperature Science/Lecturer)
題名: 海洋サブメソスケール渦の観測
Observations of submesoscale eddies

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ROBOTICA(氷床・海洋相互作用の現場観測プロジェクト)の紹介 (田村岳史 Takeshi Tamura) 発表要旨:

南極氷床−海氷−海洋システムにおいて、近年の西南極氷床の融解加速と それに対する海洋の役割が注目を集める一方、東南極において地域的相違と 十年規模から数百万年規模の時間変動の存在が明らかになりつつある。本 プロジェクトは、南極観測船「しらせ」の機動的な利用により、東南極における 上記システムの地域的相違の解明と十年規模変動の実態把握を目指す。  棚氷融解が顕著とされるものの、これまで観測のないウィルクスランド沖(東経 100〜120度近辺)において観測を実施すると同時に、対照的なリュツォ・ホルム 湾域(昭和基地周辺:東経30〜40度近辺)を舞台とした氷床‐海洋相互作用の 素過程の詳細な把握を目指す。また、リュツォ・ホルム湾域にみられる定着氷や 氷河氷舌の十年規模変動、および海洋経年変動の実態と関係性を明らかにする。  これまでの氷床‐海氷‐海洋観測研究の進展の上に、無人観測装置および 測地学的手法を活用した分野横断的観測を加えることで、東南極気候システム 理解のブレークスルーを目指す。

海洋サブメソスケール渦の観測 (中村知裕 Tomohiro Nakamura) 発表要旨:

海洋は渦に溢れている。最初、中規模渦と呼ばれる直径10〜数百km (鉛直第一モードの変形半径のスケール)が注目されてきたが、ここ10年近くは、 それより小さい「サブメソスケール渦」が注目を集めている。サブメソスケール渦 は、水平スケールが小さいため鉛直方向の運動が相対的に大きくなり、鉛直輸送が 生じやすい。そのため、表層−亜表層間や大気−海洋間のやりとりに重要な役割を 果たすと考えられている。外洋域におけるサブメソスケール現象の代表例として、 混合層内傾圧不安定がある。 例えば、親潮域は昔から中規模渦が多いことで知られているが、近年、 サブメソ規模の渦(や現象)も活発であることが明らかになっている。 親潮域では基礎生産が非常に高いため、豊富な水産資源が形成される上に、 生物過程に伴う海洋へのCO2吸収量も大きく全球炭素循環にも影響を与えている。 この基礎生産に欠かせない、冬季における亜表層から混合層への栄養塩や鉄と いった栄養物質取込に、サブメソ規模現象が影響している可能性が高い。  一方、上記のような力学的不安定に加えて、沿岸近くでは外的駆動力も重要 となりうる。例えば、千島列島域は中規模渦が活発で海水の輸送や混合に 影響しているが、近年、それに加えてサブメソ規模の渦も数多く生成されて いることが見つかった。その活発さからして、これらのサブメソ規模渦も列島 周辺の海水輸送や混合に影響を与えている可能性がある。  ここでは、過去の親潮域における海洋観測および千島列島域の衛星観測で 見られた、これらのサブメソ規模現象を紹介する。

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連絡先

川島 正行 (Masayuki Kawashima)
mail-to: kawasima@lowtem.hokudai.ac.jp