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第280回 大気海洋物理学・気候力学セミナー のおしらせ

日 時: 1月 21日(木) 午前 09:30
場 所: 低温科学研究所 3階 講堂

発表者:唐木達郎(大気海洋物理学・気候力学コース/D2)
speaker:Tatsuro Karaki (Course in Atmosphere-Ocean and Climate Dynamics/D2)
題名:定常な流れの流下方向に生じるBuoyancy Arrestについて
Title:Buoyancy Arrest toward Downstream Direction for Steady Flow

発表者:加渡佑輔 (大気海洋物理学・気候力学コース/M1)
speaker:Yusuke Kado (Course in Atmosphere-Ocean and Climate Dynamics/M1)
論文紹介(Introduction of articles): Watanabe, S. I., and H. Niino, 2014: Genesis and Development Mechanisms of a Polar Mesocyclone over the Japan Sea. Monthly Weather Review, 142(6), 2248-2270.

発表者:濱口萌愛 (大気海洋物理学・気候力学コース/M1)
speaker:Moe Hamaguchi (Course in Atmosphere-Ocean and Climate Dynamics/ M1)
論文紹介(Introduction of articles): Couldrey, M. P., L. Jullion, A. C. Naveira Garabato, C. Rye, L. Herraiz- Borreguero, P. J. Brown, M. P. Meredith, and K. L. Speer, 2013: Remotely induced warming of Antarctic Bottom Water in the eastern Weddell gyre. GEOPHYSICAL RESEARCH LETTERS, 40, 2755-2760.

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定常な流れの流下方向に生じるBuoyancy Arrestについて (唐木達郎 Tatsuro Karaki)発表要旨:

 外部強制力がなければ地衡流は粘性散逸(例えば海底摩擦によって生じ る)によって衰退する。その時間スケールは一般的にspin-down(Pedlosky 1987)と呼ばれる。しかしながら海洋では、海底斜面と成層の効果によっ てspin-downを免れることがある。それは散逸によって停止するよりも早 く、流れが温度風バランスになるためである。この定常状態はBuoyancy Arrest(Brink and Lentz 2010) と呼ばれていて、特に沿岸域に特化した海洋 力学として扱われる。  Buoyancy Arrestに至るまでの時間スケールに、流れの流速スケールを 掛ける。そうすれば、流れがBuoyancy Arrestに達するまでの距離のスケ ールが分かるだろう。このアイデアを実践したのはChapman and Lentz 1997である。彼らはこの着想を理想化モデルの数値実験で検証し、流下 方向に発展する沿岸流の構造を明らかにしようとした。しかしそれを示 す実験結果は出なかった。数値モデルが示したことは、流れが流入口か ら温度風バランスになるまでの距離は、アイデアから導出したBuoyancy Arrestの距離の予測値よりもずっと短いということであった。この問題 はまだ解決されていない。  本研究が目指したことは、海底斜面上の成層流体の構造が流下方向に その構造を変化させ、やがてBuoyancy Arrestに到達することを記述し、 かつ定量性を満足する理論を構築することである。そのために、これま で運動方程式内で無視されてきた移流の効果に注目して理論を再構築し た。その方程式系を数値解析し、Chapman and Lentz 1997の提示した 問題を解決できたことを示唆する結果をだした。この結果に対する解釈 がまだ不十分なため、本セミナーでは結果を示すだけに止まる。しかし、 いかにして方程式系を整備したかなどについて、式ではなく絵を用いて 直感的に説明できたらと考えている。

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豊田 威信 (Takenobu Toyota)
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