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第 258回 大気海洋物理学・気候力学セミナー のおしらせ

日 時: 7月 24日(木) 午前 09:30
場 所: 環境科学院 D棟2階 D201号室

発表者: 君塚政文 (東京海洋大学 大学院海洋科学技術研究科/DC3)
Masafumi Kimizuka (Graduate school of marine science and technology, Tokyo university of marine science and technology/DC3)
題名: 北太平洋亜熱帯循環系の水平および鉛直構造
Vertical and horizontal structures of the North Pacific subtropical gyre axis

発表者: 室井ちあし(札幌管区気象台気象防災部長)
Chiashi Muroi (Director, Disaster Mitigation Department, Sapporo District Meteorological Observatory)
題名: 最新の気象予測技術について
Advanced weather prediction technology

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北太平洋亜熱帯循環系の水平および鉛直構造 Vertical and horizontal structures of the North Pacific (君塚政文 Masafumi Kimizuka)  発表要旨 :

アルゴフロート観測に基づく海洋観測データおよび様々な風応力データセット を用いて、循環系の流線の形状に着目し,北太平洋亜熱帯循環系の(1)鉛直平 均水平2次元循環および(2)鉛直構造の平均的分布を詳細に調べた。循環系の流 線の形状の指標として,北太平洋亜熱帯循環系の北側にある東向きの流れと, 南側の西向きの流れの境界を循環軸と定義し,その分布に注目した。(1)鉛直 平均水平2次元循環および(2)循環系の鉛直構造は,ともに約170°Eを境に東西 で異なる。170°Eの西側では,非常に強い黒潮続流とその南側の黒潮再循環の 影響に支配されていた。これは通気水温躍層理論とスベルドラップバランスか ら予想される特徴と異なることを示している。 (1)鉛直平均水平2次元循環の循環軸として,スベルドラップ循環と鉛直積算し た海洋循環の循環軸の分布を比較した。結果は,170°Eの東側では一致するが、 西側では不一致であった。170°Eの東側では,スベルドラップ循環と鉛直積算 した海洋循環ともに約25°Nと30°Nに2つの循環軸がみられた。この2つの循環 軸は,その間に低気圧性海洋循環があることを示しており,さらに局所的な低 気圧性風応力カール偏差が要因であることがわかった。一方170°Eの西側では, スベルドラップ循環の循環軸は、東側に引き続き南北に2つみられるものの、 鉛直積算海洋循環の循環軸は、1つしかみられなかった。 (2)循環軸の鉛直構造は,渦位の保存による通気水温躍層理論の特徴である、深 度とともに循環が北へシフトする特徴が、170°Eより東側で顕著であるが,西 側ではみられなかった。また東部での循環軸の北へのシフトは,中央モード水 の水平一様性によって中央モード水内で比較的小さいことがわかった。これは, 亜熱帯循環系のような大規模な循環に及ぼす中央モード水の力学的な影響を示 している。発表当日は,これらの時間変動や大気海洋相互作用の影響について も触れる予定である。

最新の気象予測技術について Advanced weather prediction technology (室井ちあし Chiashi Muroi) 発表要旨:

 テレビやインターネットでおなじみの天気予報・気象情報は、毎日の生活に 欠かせないばかりではなく、集中豪雨や台風、暴風雪等の災害から身を守るた めに重要な情報である。気象庁では最新の観測技術やスーパーコンピューター での数値計算技術を活用し、精度の高い気象予測を目指して技術開発を行うと ともに、各気象台では毎日の観測や気象情報の作成作業にあたっている。中で も、スーパーコンピューターを活用した数値予報は、客観的な気象予測を行う ための要の技術であり、気象庁では1959年に数値予報業務を開始して以来、 最新の気象学の知見や数値計算法を応用することで精度向上を行ってきている。 本セミナーでは、気象予測のニーズや大気中で生じるさまざまな気象現象、そ れに対する予測可能性を踏まえつつ、数値予報を中心とした最新の気象予測技 術について、基本方程式や物理過程のパラメタリゼーション、データ同化、ア ンサンブル予報の考え方など、その概要を解説する。  札幌管区気象台は気象庁の管区気象台のひとつとして、北海道地方の気象情 報の発表や地震・火山などの観測を行っている。さまざまな気象現象、気象災 害に対して気象台がどのような役割を果たしているか、その業務概要や今後の 課題についても紹介する。

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連絡先

水田 元太 (Genta Mizuta)
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