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第 250回 大気海洋物理学・気候力学セミナー のおしらせ

日 時: 12月 19日(木) 午前 09:30
場 所: 低温科学研究所 3階 講堂

発表者: 堀之内 武(地球環境科学研究院/准教授)
\\ Takeshi Horinouchi(Faculty of Enviromental Earth Science/Associate Professor)
題名:夏季の東アジア・北西太平洋域の総観規模変動,水蒸気輸送,降水への上部対流圏の影響
\\Upper tropospheric influence on synoptic variability, moisture transport, and precipitation over summertime East Asia and the Northwestern Pacific

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夏季の東アジア・北西太平洋域の総観規模変動,水蒸気輸送,降水への上部対流圏の影響 \\Upper tropospheric influence on synoptic variability, moisture transport, and precipitation over summertime East Asia and the Northwestern Pacific \\(堀之内 武\\Takeshi Horinouchi)発表要旨 :

夏季の東アジア・北西太平洋域の総観規模の水輸送と降水における上部対流圏 の変動の役割を,客観解析と衛星データを用いて調べた。上部対流圏ではアジ アジェットに乗ってロスビー波が東進し,太平洋上のトラフで減速,砕波する。 その過程は 350 K の等温位面(約 200 hPa)での 1.5 PVU 程度の渦位コンター (ほぼ対流圏界面の位置にあたる)でよく可視化される。本研究では,この渦 位コンターの南縁に沿ってとくに降水が活発化することが見出された。上層の 渦位コンターを境に,南側では下層の水蒸気量が多く,北側では少なくなる。 これに伴う水蒸気勾配は,上層の渦位コンターの位置の変化にあわせて移動す る。また,渦位コンターの南側では上昇流が卓越することが多い。これらはコ ンター南縁での降水強化に整合的である。 準地衡の渦位およびそのインバージョン,Qベクトル,トラジェクトリ計算等を 用いた解析の結果,以下が明らかになった。日本付近から北西太平洋にかけて の下層の渦位変動は,おもに上層により中層経由で駆動される。この効果は水 蒸気勾配が強い場所の変動にも重要である。また上層の変動は2次循環に伴う 上昇流をPVコンター南縁に誘起する傾向がある。 夏季の大規模な降水の背景として,太平洋高気圧をまわる水蒸気供給があるこ とは良く知られている。しかしそれが及ぶ範囲は日々変動する。上記の過程は その変動をもたらす重要な過程である。なお,地表で解析される停滞・寒冷前 線は上記のPVコンターに対応することが多い。停滞前線がどこで形成されやす いかは,上層の変動に左右されるのである。講演では,下端境界の効果を取り 込んだ渦位を積極的に活用すると何が見えてくるかということも議論する。

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連絡先

松村 義正 (Yoshimasa MATSUMURA)
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