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第 241回 大気海洋物理学・気候力学セミナー のおしらせ

日 時: 4月 25日(木) 午前 09:30
場 所: 環境科学院 D棟2階 D201号室

発表者: 池川慎一 (D2)
\\Shinichi IKEGAWA (DC2)
題名: 金星探査機Venus Expressの紫外線観測データを用いた風速推定の研究
\\Estimation of wind from Venus Express UV image

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金星探査機Venus Expressの紫外線観測データを用いた風速推定の研究 \\Estimation of wind from Venus Express UV image \\(池川慎一 \\Shinichi IKEGAWA)発表要旨 :

金星大気では, 雲頂高度約65 km付近で自転と同じ向きに, 自転速度1.6 m/sのお よそ60倍である西向き100 m/sに達する高速東西風が存在する. 特に, 自転より 速く自転と同じ向きの風をスーパーローテーションという. 過去のミッションで は, アメリカ航空宇宙局の探査機Mariner 10が金星周回軌道から初めてスーパー ローテーションを確認した. しかしながら, スーパーローテーションがどのよう にして生成されているかは未だ明らかになっていない. 金星大気におけるスーパ ーローテーション生成メカニズムの有力な仮説の一つとして, 子午面循環に着目 したギーラシメカニズムがある(Gierasch, 1975). これを検証するためには, 数 千km 以下の細かな空間分解能で風速を推定することが要求される. 今までの風 速推定(Limaye and Suomi ., 1980; Rossow et al., 1990)は, ギーラッシメカ ニズムを支持するために必要な空間分解能や精度が保証されていない. 本研究の 目的は, 相互相関法による風速推定の改良と風速推定の精度評価を確立すること である. 本研究で使用したデータは, 欧州宇宙機関の金星探査機Venus Express に搭載されているVenus Monitoring Camera(Markiewicz et al ., 2004)の紫外 画像(365 nm)である. 本研究で使用した紫外画像にはCCD(Charge Coupled Devices)素子の電荷を読み出す際に生じた縦縞のランダムノイズやカメラが太陽 にさらされたことで生じた数ピクセルに渡るノイズが存在する. 従って, 1ペア に基づく風速推定は得られた風速の信頼性が分からない. そこで, 本研究では多 数のペアを使用して風速推定を行うことで, 推定誤差を低減するとともに相関係 数の向上を試みた. Venus Expressは過去のミッションと異なり連続した画像の 撮像間隔が非常に短い. そこで, 本研究では, 時間間隔が3時間以内であるデー タを全て使用した. 画像ごとのノイズが無相関であれば, 多数のペアを使用する ことでノイズは減少し, 有効自由度は増加する. 従って, 風速推定の精度は向上 する. 本研究では, 風速推定の精度は相関係数の誤差を元に求めた. また, 複数 の評価指標を用いることにより, 客観的な推定結果の精度評価が可能になった. その結果, 多数の画像を使用することで風速推定の精度が向上することが示され た.

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連絡先

松村 義正 (Yoshimasa MATSUMURA)
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