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第 238回 大気海洋物理学・気候力学セミナー のおしらせ

日 時: 1月 17日(木) 午前 09:30
場 所: 低温科学研究所 3階 講堂

発表者: 杉立卓治(D2)
\\Takukji Sugidachi (DC2)
題名: Meisei RS2-91、RS-01GおよびRS-06Gラジオゾンデによる湿度測定の気温0℃における不連続な変化の補正法
\\Correction of the stepwise change observed at 0 °C in Meisei RS2-91, RS-01G, and RS-06G radiosonde relative humidity profiles

発表者: 稲津 將(北海道大学大学院理学研究院 准教授)
\\Masaru Inatsu (Faculty of Science, Hokkaido University/Associate Professor)
共著者: 久野龍介(北海道大学大学院理学院 M2)
\\Ryusuke Kuno (MC2, Graduate School of Science)
題名: サンプリング・ダウンスケーリングの開発:北海道における冬季降水の場合の研究
\\Development of sampling downscaling: A case for wintertime precipitation in Hokkaido

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Meisei RS2-91、RS-01GおよびRS-06Gラジオゾンデによる湿度測定の気温0℃における不連続な変化の補正法 \\Correction of the stepwise change observed at 0 °C in Meisei RS2-91, RS-01G, and RS-06G radiosonde relative humidity profiles \\(杉立卓治 \\Takukji Sugidachi)発表要旨 :

Meisei RS-06Gラジオゾンデの相対湿度計と高層気象観測用の 鏡面冷却式露点計の比較測定の結果、RS-06Gの相対湿度測定は 気温0℃において約3%RH (Relative Humidity)の不連続な変化が 生じることがわかった。この不連続な変化は、RS-06Gの湿度セン サの温度依存性を補うために適用されている温度補正式が気温 0 ℃で不連続であるために生じる。RS-06GはRS2-91およびRS-01G の後継機であり、1999年7月頃にRS2-91の湿度センサが新しいタイ プに変更された以降、これらのラジオゾンデには同一の湿度セン サが用いられ同一の温度補正式が適用されている。 温度槽を用いてRS-06Gの温度湿度依存性を評価した結果、RS-06G の相対湿度は気温+10℃以下において7% RH以上の湿潤バイアスを 示した。このような大きな湿潤バイアスは過去に実施されたラジ オゾンデの相互比較観測等で確認されていないため、ラジオゾン デ上昇中に生じる湿度センサの温度の遅れが引き起こす乾燥バイ アスの影響についても調べた。この結果、対流圏では湿度センサ の温度の遅れによる乾燥バイアスが生じる可能性があり、湿度 センサの温度依存性による湿潤バイアスを小さくしていると考え られる。これら二つの要因を考慮した、気温0 ℃で生じる不連続 な変化を解消するための温度補正式を作成した。すなわち気温 -40~0 ℃で適用されている従来の温度補正式を+14.5 ℃まで外挿 する。この結果、RS-06Gの相対湿度測定値は、気温+40 ℃で乾燥 バイアス、気温+10 ℃以下で湿潤バイアスを示すが、メーカー 公称精度である±7%RH内に収まることがわかった。この新しい 補正式は、RS2-91(1999年中頃以降)、RS-01GおよびRS-06Gに よる相対湿度測定に対して適用されるべきである。

サンプリング・ダウンスケーリングの開発:北海道における冬季降水の場合の研究 \\Development of sampling downscaling: A case for wintertime precipitation in Hokkaido \\(稲津 將・久野龍介 \\Masaru Inatsu and Ryusuke Kuno)発表要旨 :

気候変動予測やアンサンブル季節予測に対し、ダウンスケーリングを行って地 域詳細でユーザフレンドリーなデータを作り出すことが気象情報の応用利用の観点で 重要である。領域モデルを利用して物理的に整合性のあるデータを提供する力学的ダ ウンスケーリングが、場当たり的な統計関係を利用してデータを生成する統計的ダウ ンスケーリングよりも理想的だが、通例その計算コストは高い。本研究では、事前に 領域気候をと共変動する全球気候パターンを統計的に抽出し、領域気候に偏差を作り やすい代表的な年だけを力学的ダウンスケーリングする手法、名付けてサンプリン グ・ダウンスケーリングを開発した。その手法の正当性を検証するため、北海道にお ける冬季降水に着目し、従来型の力学的ダウンスケーリングとして30年分の領域気 候計算を実施した。とくに月平均と強降水日の気候値を北海道14支庁に対して計算 した結果、30年から求めた結果と代表的な4年をサンプルして求めた結果の間の差 異小さかった。とくにランダムに4年をサンプルするのに比べると格段に良い結果で あった。サンプリング・ダウンスケーリングが可能かどうかは、領域・季節によるだ ろうが、力学的ダウンスケーリングの計算コスト低減の一つの方法として提案できる と考える。 なお、本研究は文部科学省受託研究「北海道を対象とする総合的ダウンスケーリング 手法の開発と適応」の一環である。

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連絡先

川島 正行 (Masayuki Kawashima)
mail-to: kawasima@lowtem.hokudai.ac.jp