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第 237回 大気海洋物理学・気候力学セミナー のおしらせ

日 時: 12月 20日(木) 午前 09:30
場 所: 低温科学研究所 3階 講堂

発表者: 松田淳二(DC3)
\\Junji Matsuda (DC3)
題名: 高解像度オホーツク海・北太平洋モデルでわかってきたこと
\\ What has been cleared with the high resolution Okhotsk-North Pacific ocean circulation model.

発表者: 上原裕樹(PD)
\\Hiroki Uehara (PD)
題名: オホーツク海の高密度陸棚水に対する北太平洋からの塩分偏差移流の影響
\\Remotely propagating salinity anomaly affects North Pacific ventilation source

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高解像度オホーツク海・北太平洋モデルでわかってきたこと \\What has been cleared with the high resolution Okhotsk-North Pacific ocean circulation model. \\(松田淳二 \\Junji Matsuda)発表要旨 :

 オホーツク海から北太平洋にわたる熱塩循環の実態と循環のメカニズムについ て高解像度モデルを用いて明らかにしようとしており、その経過を報告する。モ デルの解像度は主要な海氷生成域であるオホーツク海北西部大陸棚沿岸で3km以 上、千島列島周辺で7km以上である。渦や、千島列島周辺の細かい地形を解像す るように設定されている。  モデルは太平洋・オホーツク海の循環や、海氷分布、温度塩分を再現した。特 にオホーツク海表層にはカムチャツカ半島西方沖で北上する強い流れや、カムチ ャツカ半島西部沿岸から北西部大陸棚沿岸にわたる強い流れが再現された。これ らの海流が高密度水形成域に高塩分水を運んでいると予想され、このことはトレ ーサー実験や感度実験からも確認できた。トレーサー実験や感度実験はさらにベ ーリング海や北極海の変動がオホーツク海へ影響することを示唆していた。ベー リング海峡通過流を変化させた実験では低塩分偏差がベーリング海の沿岸の狭い 領域を伝ってオホーツク海へ到達していた。  千島列島の海峡では強い潮流がある。潮汐により島を回る潮汐残差流が形成さ れ、潮汐残差流はオホーツク海と北太平洋の海水交換として正味の塩分フラック スを生じうる。モデルに潮汐力を与えた結果を紹介する。  本モデルはかなり計算負荷が大きいが北大の大型計算機を用いれば十分実用に 耐えうる。北大の大型計算機についても簡単に紹介する。

オホーツク海の高密度陸棚水に対する北太平洋からの塩分偏差移流の影響 \\Remotely propagating salinity anomaly affects North Pacific ventilation source \\(上原裕樹 \\Hiroki Uehara)発表要旨 :

オホーツク海陸棚域で形成される高密度陸棚水 (DSW) は, 北太平洋に広がる北 太平洋中層水を通気し, 上層およそ1000 mに及ぶ北太平洋の鉛直循環の駆動源で あると同時に, 鉄輸送を通じ西部亜寒帯における顕著な生物生産と二酸化炭素固 定に貢献する. このため, 北太平洋セクターの気候システムにおけるDSWの役割 は大きいと考えられる. ロシアデータを用いて, 1950-2005年におけるDSW塩分の 経年変動を調べたところ, 50年間換算で0.08 psu (‰とほぼ等しい) の低塩分化 傾向と, 顕著な10年スケールの変動があることが明らかになった. また, この塩 分変動に対し, ベーリング海を介した北太平洋からの塩輸送 (上層における塩分 偏差の移流) の影響が大きいことも分かった. この結果は, オホーツク海の局所 的な影響 (海氷生産など) を重視する従来の考え方に注意を喚起するものであ り, 気候変動予測の改善のため, モデルによる北太平洋全体の熱「塩」構造・変 動の再現性向上が肝要であることを示唆する.

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連絡先

川島 正行 (Masayuki Kawashima)
mail-to: kawasima@lowtem.hokudai.ac.jp