****************************************************************************************************************

第 232回 大気海洋物理学・気候力学セミナー のおしらせ

日 時: 7月 19日(木) 午前 09:30
場 所: 環境科学院 D棟2階 D201号室

発表者: 阿部 祥子 (DC3)
\\Shoko Abe (DC3)
題名: 大振幅内部波の砕波から乱流に至る過程
\\Processes of breaking of large-amplitude internal waves leading to turbulence

発表者: 山下 和也 (DC3)
\\Kazuya Yamashita (DC3)
題名: 大気境界層で観測されるストリーク気流構造の特性
\\The characteristics of the Streak Structure in the atmospheric boundary layer

****************************************************************************************************************


大振幅内部波の砕波から乱流に至る過程 \\Processes of breaking of large-amplitude internal waves leading to turbulence \\(阿部祥子 \\Shoko Abe)発表要旨 :

鉛直混合は、熱塩循環だけでなく物質循環や生態系にも影響を与える重要な物理過程 である.特に潮流が速い陸棚域や列島域では、潮流と地形によって励起された大振幅 内部波が砕波することによって、外洋域と比べて非常に強い鉛直混合が生じている. 砕波する大振幅内部波と鉛直混合の空間スケールの差は大きく、この間の過程は鉛直 2次元空間でさえよくわかっていない.そこで、本研究では高解像度の鉛直2次元非 静水圧モデルを用いて上記の過程を調べた.その結果、振幅が200mに達する大振幅 内部波が励起され、この内部波の成長により密度逆転の領域が形成された.そして密 度逆転領域で鉛直対流が生じた、つまり、内部波が砕波し始めた.その後、シアーが 不安定となって成長するKelvin-Helmholtz (KH)波と海底境界層が不安定となって成 長するTollmien-Schlichting (TS)波が順に励起され、KH波とTS波の成長と崩壊が、 内部波の密度逆転に起因する対流と同様に、鉛直混合を強化していることが示唆され た.さらに、現れたKH波とTS波は共鳴することが示唆され、発達初期段階ではKH波 とTS波それぞれの線形成長理論を組み合わせることによってこの共鳴のメカニズム を説明できることがわかった.

大気境界層で観測されるストリーク気流構造の特性 \\The characteristics of the Streak Structure in the atmospheric boundary laye \\(山下和也 \\Kazuya Yamashita)発表要旨 :

大気境界層には、ほぼ風向に沿った筋状の気流構造(ストリーク)が昼夜や季節 を問わず普遍的に存在する事が2004年から継続しているドップラー ライダーに よる観測から明らかになっている。地表面と大気間の運動量・熱・物質の輸送は これら境界層の組織的構造がその大部分を担っておりその見 積りには構造の理 解が必要である。 本研究では札幌、東京の都市域や周りを海で囲まれた長崎県の池島での長期の ドップラーライダー観測から、ストリークの高度毎の間隔や風速偏差など の統 計的な特徴を明らかにし、また、ある1地点における風の時間変動が気流のどの ような時空間構造の結果として観測されているものかを調べる事を 目的とする。 風向を横切る方向に風速の空間変動を調べると、ストリークによる変動と境界層 全体に亘る大きな渦構造である水平ロール渦によると思われる変動とに 分離・ 大別出来、日中晴天時は両者が共存している。ストリークの間隔は大気境界層高 度に依存せず高度と共に緩やかに増加する。一方ロール渦の波長 は大気境界層 の厚さとほぼ比例する。ある地点での風の時間変動はこれらメカニズムが異なる が関わり合っていると思われる各々の構造とその動きの結 果として現れる。

-----
連絡先

川島 正行 (Masayuki Kawashima)
mail-to: kawasima@lowtem.hokudai.ac.jp