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第 224回 大気海洋物理学・気候力学セミナー のおしらせ

日 時: 12月 8日(木) 午前 09:30
場 所: 低温科学研究所 3階 講堂

発表者: 杉立 卓治(地球圏科学専攻 大気海洋物理学・気候力学コース/D1) \\Takukji Sugidachi, Course in atmosphere-ocean and climate dynamics/DC1
題 目: 気候監視のためのラジオゾンデ用水蒸気センサの開発 \\Development of a balloon-borne hygrometer for climate monitoring

発表者: 稲津 將(北海道大学大学院理学研究院/准教授) \\Masaru Inatsu, Faculty of Science, Hokkaido University/Associate Professor
題 目: 確率微分方程式に基づく位相空間内の 季節予測可能性: 理論と中高緯度冬季におけるデータ解析 \\Sub-Seasonal Predictability in the Phase Space Based on Stochastic Differential Equation: Theory and Data Analysis for Extratropical Winter

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気候監視のためのラジオゾンデ用水蒸気センサの開発 \\Development of a balloon-borne hygrometer for climate monitoring \\(杉立 卓治 \\Takukji Sugidachi)発表要旨 :

水蒸気は、日々の天気や気象現象に関わるだけでなく、上部対流圏や 成層圏においては地球の放射エネルギー収支、雲物理、オゾン光化学等 に主要な役割を果たす。近年、地球温暖化問題への関心が深まり、気候 監視が重要視され、上部対流圏・成層圏の水蒸気観測が必要とされるよ うになってきた。しかし、その測定技術は満足な状態にあるとは言えず、 気候監視の目的に合致した水蒸気センサは存在しない。そこで本研究で は、地上から下部成層圏までの水蒸気濃度を連続観測できるラジオゾン デ用の鏡面冷却式露点霜点計を開発することを目的とする。  鏡面冷却式露点霜点計は、熱力学原理に基いた高精度な水蒸気測定が 可能である。大気に晒した小さな鏡を冷却すると、鏡面の温度が露点も しくは霜点温度に達し、鏡面上に露もしくは霜が結ばれる。鏡面上に露・ 霜がうっすらと付き、その量が変化しない状態(平衡状態)を保つよう に冷却強度を常時調整する時、鏡の温度は大気の露点もしくは霜点温度 とみなされる。露点・霜点温度が計測できればClausius-Clapeyronの関 係式により水蒸気分圧が算出でき、さらに気圧、気温値と合わせること で、体積混合比、相対湿度が算出される。  本研究では、これまで産業用として使用されていた鏡面冷却式露点霜 点計FINEDEW^TM((株)山武)を改造し、ラジオゾンデ用鏡面冷却式露点 霜点計を開発した。主な開発内容は次のとおりである。 1.耐低温、耐振動の軽量化したハードウェアの製作 高層の低温で正確に鏡面温度を測定できる回路設計や飛揚中の 振動による影響を受けない安定したハードウェアを作製した。 2.鏡の冷却強度をコントロールする制御パラメータの設定 高層大気の気圧や気温を再現できる気圧温度槽などを使用し、 各高度に適した制御パラメータの設定を行った。 3.ラジオゾンデに適した装置構成(通風筒)の検討 対流圏で風船や装置自体に付着した水滴・氷粒が成層圏で蒸発 昇華することで発生する測定大気以外の水蒸気の混入や鏡面付 近に安定した空気の流れを発生させるため、測定空気取り込み 用の通風筒を設置する。安定した鏡面冷却の制御を行うために は弱い流れ(風速3m/s以下)が望ましいが、流速は通風筒の形 状や気圧に依存すると考えられる。そこで低温・低圧で動作す る熱線風速計を自作し通風筒の中に設置し、流速を確かめた。 4.測定性能の評価(飛揚試験、他水蒸気計との比較) これまでに計3回の飛揚試験を行った。1回目では高度10km、 2回目では高度17kmまでの測定に成功した。3回目はバルーン 等に付着した氷粒からの水蒸気の混入を受けた可能性があり、 正しい測定が行えなかった。これらの飛揚試験で得られた露点・ 霜点温度から相対湿度や水蒸気混合比を算出し、静電容量型高 分子膜相対湿度 計や人工衛星Auraに搭載されたMicrowave Limb Sounder(MLS)の値と比較を行った。 発表では、以上の内容に加えて開発した水蒸気センサの課題や今後の展 望について紹介する。

確率微分方程式に基づく位相空間内の季節予測可能性:理論と中高緯度冬季におけるデータ解析 \\Sub-Seasonal Predictability in the Phase Space Based on Stochastic Differential Equation: Theory and Data Analysis for Extratropical Winter \\(稲津 將 \\Masaru Inatsu)発表要旨 :

本研究ではまず30年間の冬季再解析データより見積もった2つの主成分の上 に季節予測可能性の指標を射影した。同様に確率微分方程式のドリフトベクト ルと拡 散テンソルを統計的に推定し、同位相空間上に射影した。その結果、予測スプ レッド は決定論的な誤差成長ではなく確率論的な拡散によって説明された。線形系で あって も外力があればこのようなことになる可能性は排除できないが、2次元に次元 を縮約 したことがその主な理由と考えられる。 This study examined the subseasonal predictability projectonto the two leading modes empirically estimated with a 30-yr wintertime reanalysis data. The drift vector and diffusion tensor in thestochastic differential equation was empirically estimated and projected onto thephase space as well. The result suggested that the forecast spread was well explained by not the deterministic error growth but the stochastic diffusion. The dimension contract to the two dimensions mainlycontributed to the stochastic diffusion, but it does not exclude the possibilitythat the system is almost linear with an external forcing.

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豊田 威信
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