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第 199 回 大気海洋物理学・気候力学セミナー のおしらせ
日 時: 10月 15日(木) 午前 09:30
場 所: 低温科学研究所 3階 講堂 Auditorium, Institute of Low
発表者:内本圭亮 //UCHIMOTO Keisuke (低温科学研究所 環オホーツク観測研究センター 博士研究員 \\Pan-Okhotsk Research Center,Institute of Low Temperature Science, postdoctral reseacher)
題 目:CFCの取り込みと通気に対する千島列島域鉛直混合とブライン排出の影響 \\ The influence of diapycnal mixing around the Kuril Islands and brine rejection on CFCs uptake and ventilation
発表者:川島正行 //MASAYUKI KAWASHIMA (北大低温研 助教\\Institute of Low Temperature Science, assistant professor)
題 目:寒冷前線降雨帯のコア-ギャップ構造に対
する鉛直・水平シア, 浮力の影響 //Effects of vertical and horizontal wind
shears and buoyancy on core-gap structure of narrow cold frontal rainbands.
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CFCの取り込みと通気に対する千島列島域鉛直混合とブライン排出の影響 \\ The influence of diapycnal mixing around the Kuril Islands and brine rejection on CFCs uptake and ventilation (内本圭亮 //UCHIMOTO Keisuke) 発表要旨 :
北太平洋及びオホーツク海中層は,千島列島域の潮汐による強い鉛直混合とオ ホーツク海北部域での海氷生成時におけるブライン排出により通気されている. この通気をフロン(CFC)のモデリングによって考察する.CFCは通気の一つの 指標である.海面で海水に取り込まれた後,それ自身が化学変化をおこすこと もなく,また生物等に利用されることもなく,海水とともに移動していくから である. モデリングには東大CCSRのICED-COCOを使用している.モデル領域は北西部北 太平洋域である.千島列島域の鉛直混合は拡散係数を大きくすることによって モデルに組み込んでいる.まず,物理場が観測に合うようにチューニングし, CFCのシミュレーションを行った.Yamamoto-Kawai et al. (2004)のオホーツ ク海でのCFCの観測結果と比べたところ,よい一致が見られた.モデルにおい ても Yamamoto-Kawai et al. の観測の通り,オホーツク海北部域と千島列島 域でCFCが中層へ供給されている.前者はブライン排出に伴う高密度水の沈み こみによるもので,後者は鉛直混合によるものである. この二つのプロセスにより,CFCがどの領域に,どの深さに送り込まれるのか を見るために,二つの実験を行った.千島列島域の鉛直混合効果を除いた実験 (NOtide)とブライン排出を抑制した実験(NObrine)である.これらの実験 とシミュレーションを比較することで,それぞれの影響を見ることができる. その結果,ブライン排出の影響は非常に限定的にしか及ばないことが分かった. ブラインが排出される北部の陸棚域とそこで形成された重い水(DSW)の流路 に沿ってのみブラインの影響が見られた.それに対し,千島列島域の鉛直混合 の効果はオホーツク海全域の中層,深層に及ぶ.また,CFCの海への取り込み もほとんどが千島列島域で行われ,北部域は副次的であった.
寒冷前線降雨帯のコア-ギャップ構造に対する鉛直・水平シア, 浮力の影響 //Effects of vertical and horizontal wind shears and buoyancy on core-gap structure of narrow cold frontal rainbands. (川島正行 //MASAYUKI KAWASHIMA) 発表要旨 :
寒冷前線に伴う降雨帯は,しばしば前線に対して時計回りに傾いた軸を持つ強雨域 (降水コア)と弱い雨域(ギャップ)からなる波長十数十km程度の波状構造を示す ことが古くから知られている. Kawashima (2007)では雲解像モデルを用いた前線強化 実験をもとにその成因について調べ、前線面上の鉛直シア流の不安定により観測と 良く似た降水コア-ギャップ構造が生じることなどを示したが、その実験では前線と 直交する水平風(東西風)の鉛直シアが比較的弱い場合を想定していた. 本研究では前線に直交する風の鉛直シア、前線に平行な風の水平シア、暖域の成層 などを変えた一連の数値実験により、寒冷前線上に発生する擾乱の構造と形成メカニ ズムの環境場依存性について調べた. 前述の数値実験ではf面上での前線強化を想 定したが、本研究では各種パラメータを独立して変化させるために、回転の効果は入 れず、適当な冷源と前線に沿った向きの運動量強制により、寒冷前線先端付近の構造 を再現させた. 鉛直シアが弱く、暖域の成層が弱い対流不安定の場合、前述の研究と同様の結果が 得られたが、その他の環境場では主に水平シア流から運動エネルギーを得て発達す る水平シア不安定型の擾乱に伴い観測と整合的な降水のコア-ギャップ構造が生じた. このタイプの擾乱の成長率・振幅は前線に直交する風の鉛直シア強度に顕著に依存 するが、その理由について渦度方程式等を用いて説明する. また、通常の寒冷前線に伴い観測されるような水平シア強度の範囲では、前線上に 生ずる擾乱の波長(シアゾーンの幅でスケーリングしたもの)はシアが強くなるほど長 くなった. この結果は粘性を考慮したシア流の線形不安定論から予想される結果とは 逆のセンスである. これは擾乱の発達には水平シアの効果だけでなく、寒気先端部 での温度傾度に起因した浮力の効果(短波長なほど効率的なエネルギー変換が起こる) も重要で、両者の相対的な寄与がシアとともに変わるためと考えられる. 同様の理由で、 暖域の成層が不安定になるほど、寒気と暖気の温度差が大きくなるほど、波長は短くなる。
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