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第 189 回 大気海洋物理学・気候力学セミナー のおしらせ

日 時: 1月 22日(木) 午前 09:30
場 所: 低温科学研究所 3階 講堂

発表者:小山 博司 (地球圏科学専攻 大気海洋物理 学・気候力学コース DC3)
題 目:モデル誤差を持つ予報モデルでのアンサン ブル予報:EnKFを用いて

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モデル誤差を持つ予報モデルでのアンサンブル予報:EnKFを用いて-(小山 博司) 発表要旨 :

 大気数値予報モデルによる1か月予報では、主に初期値の不正確さとモデルの
不完全さにより予報が悪化する。初期値の不正確さによる予報の悪化を防ぐため
に初期値アンサンブル法が用いられる。その一種であるアンサンブル・カルマン
フィルタ(EnKF,Evensen 1994)はデータ同化と初期値アンサンブル予報を融合し
た手法である。EnKFでは解析値と高度な初期摂動の生成が同時に効率的に行われ
るため、近年では大気大循環モデルや実際の観測データへの適用など実用化へ向
けた研究が行われている。一方、モデルの不完全さによる予報の悪化を防ぐため
にモデルアンサンブル法が用いられる。その手法は一般にある程度の任意性をもっ
て選ばれた複数のモデル、パラメタリゼーション、あるいはパラメータによる予
報を平均するもので、初期値アンサンブル法に比べて有効性に理論的な根拠を持
つような方法が確立していない。モデルアンサンブル法の一種であるマルチパラ
メータ法はパラメタリゼーションにおいて異なる複数のパラメータ値を用いる方
法で、同じモデルかつ同じパラメタリゼーションを使用するため他のモデルアン
サンブル法に比べてアンサンブルメンバー間の不確定さは比較的小さい。しかし、
パラメータ値の選択には任意性があるため適切な値を求める必要がある。 
 本研究では、EnKFを応用したパラメータを含めた同化・予報システム(pEnKFと
呼ぶ)を構築した。その最大の特徴は最適なパラメータを推定ると同時にモデル
アンサンブル予報のためのパラメータ摂動が得られることである。モデル誤差を
持つLorenz'96モデルにpEnKFを適用したところ、最適なパラメータの推定が可能
であり、初期値アンサンブルのみの予報に比べて1か月予報が改善することが分
かった。特に、予報期間の前半ではパラメータ推定の効果、後半ではモデルアン
サンブルの効果により予報が改善すると考えられる。また、低解像度(T21L11)の
大気大循環モデル(CCSR/NIES/FRCGC AGCM5.7b)へ適用した結果、一部のパラメー
タが推定可能であり、パラメータ推定の効果による予報の改善が見られた。 


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連絡先

川島 正行 @北海道大学低温科学研究所
寒冷海洋圏科学部門 雲科学分野
mail-to:kawasima@lowtem.hokudai.ac.jp / Tel: 011-706-6885