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第 177 回 大気海洋物理学・気候力学セミナー のおしらせ

日 時: 11月 22日(木) 午前 09:30
場 所: 環境科学院 2階 講堂

発表者:中野渡 拓也 (低温科学研究所 寒冷海洋圏科学部門 海洋動態 博士研究員)
題 目:オホーツク海の最大海氷面積を決定する要因

発表者:飯島 裕司 (地球圏科学専攻 大気海洋物理学・気候力学コース D3)
題 目:南大洋における海面水温の時空間変動に伴う大気場応答の研究

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オホーツク海の最大海氷面積を決定する要因 (中野渡 拓也) 発表要旨 :

  古くから,オホーツク海の海氷面積の経年変動は大気循環場との関係に注目して多くの研究がなされてきた。 
 しかし、大気循環場だけでは最も拡大する時期(2−3月)の海氷面積(最大海氷面積)の変動を十分説明する 
 ことができない。そこで、本研究では最大海氷面積を決定する要因として、これまで十分研究が行なわれて 
 こなかった海水温の変化に注目して解析を行った。その結果、最大海氷面積は前年の11から12月における 
 オホーツク海の流入水に関係するカムチャッカ海流の海面水温と有意に相関することを発見した。このような 
 相関関係は、海面水温だけでなく海洋内部の上層水温データからも確認できる。カムチャッカ海流水の 
 オホーツク海への流入が冬季に強化されることと移流の時間スケールを考慮すると、カムチャッカ海流の 
 海水温は海洋移流を通じて海氷面積に影響を及ぼすことを意味する。 
  このように、カムチャッカ海流の海水温が最大海氷面積の変化に対して敏感であることは最大海氷面積の 
 長期予測の精度を向上する可能性を持つ。そこで、海氷面積に対する海水温の影響および、オホーツク海の 
 海氷期(12月から翌年4月)の海氷面積をどのくらいの精度で予測できるかどうかを正準相関解析によって 
 評価した。解析に使用する説明変数は海面水温に加えて、これまでの研究で海氷面積の変化に対して有効と 
 されている要因である海面熱フラックス[Ohshima et al. 2006]と地衡風[Kimura and Wakatsuchi 1999]を 
 使用した。その結果、海面水温は2月から3月の海氷面積の変動に対して半分以上の寄与を持つことが 
 明らかになった。このことは、海氷面積の予測において、海面水温の変化の重要性を示すものである。 
 また、12月から翌年の2月までであれば、比較的精度よく海氷面積を予測することができそうな結果が得られた 
 ので、発表時にはその辺りについても触れたいと思う。 
  
  
   

南大洋における海面水温の時空間変動に伴う大気場応答の研究 (飯島 裕司) 発表要旨 :

  近年の衛星観測は、高解像度の海面水温分布が海流や地形によって 
 維持・形成される海域において、海上風速を変化させることを示している。 
 このメカニズムを支持する仮説には、海面熱フラックスが大気境界層の安定性を変化させ、 
 大気境界層内の運動量フラックスが鉛直的に変化することによって 
 海上風が変化すると考えられている。 
 このメカニズムを証明するには、大気境界層の構造を知る以前に、 
 海面における乱流熱フラックスと海面水温分布の形成・維持過程を知る必要がある。 
 特に、南大洋では海面水温フロントが明瞭に存在し、その海面水温砕氷船「しらせ」によって 
 毎年同じ観測ラインを繰り返し観測を行っている。 
 その測線上には、海上気象データおよびXBT/XCTDデータが蓄積されている。 
 本研究の目的は、これらの観測データを用いて、海面水温フロントの維持・形成過程 
 および海面が大気にどの程度影響を与えているかを定量的に評価することである。 
  
 「しらせ」の定時観測ラインである東経110度線における海面水温の分布は、 
 南緯約48度にフロント構造を示す。この海面水温フロントは、XBT/XCTDから得られる 
 亜表層の水温分布に一致する。この海面水温フロント上における海上気象要素の関係には、 
 海面水温・東西風速・安定度(海面水温-気温)、乱流熱フラックス(潜熱+顕熱)の間に 
 良い相関関係がみられた。これらの関係は、先の仮説を支持する有力な結果であった。   
  
  
  

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連絡先

深町 康 @北海道大学低温科学研究所
寒冷海洋圏科学部門 海洋動態分野
mail-to:yasuf@lowtem.hokudai.ac.jp / Tel: 011-706-7432