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第 175 回 大気海洋物理学・気候力学セミナー のおしらせ
日 時: 10月 25日(木) 午前 09:30
場 所: 環境科学院 2階 講堂
発表者:西浜 洋介 (地球圏科学部門 大気海洋物理学・気候力学コース 研究生)
題 目:3層準地衡流モデルへのTOPEX/POSEIDON高度計データの同化による黒潮続流域の変動現象解明
発表者:藤原 正智 (地球圏科学専攻 大気海洋物理学分野 准教授)
題 目:熱帯西太平洋の対流圏界面領域におけるCirrusの観測
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3層準地衡流モデルへのTOPEX/POSEIDON高度計データの同化による黒潮続流域の変動現象解明 (西浜 洋介) 発表要旨 :
黒潮続流域にはメソスケール現象(中規模渦や蛇行など)と大ス ケール現象(拡張状態と収縮状態およびその間の遷移)があり、 これらはそれぞれ先行研究において衛星高度計データなどを用 いて研究されている。本研究で用いたTOPEX/POSEIDON(T/P)デ ータによると南方再循環流は1993年から1995年には拡張状態、1996 年から1997年には収縮状態を示しており、収縮状態期には再循 環流にはいくつかの渦が存在した。衛星高度計データは表層の みの情報をあたえるものであり海洋内部の情報を得ることはで きない。また完全なモデルを用いるとしても海洋場の場合、個 々の表層の渦/蛇行現象に影響を与える下層の完全な初期場を 得ることは不可能であるため、表層の情報を含む観測データを モデルに取り込み下層場の情報を得ることができるデータ同化 が有効である。本研究では3層準地衡流モデルへのT/Pデータのnudging 法とadjoint法を用いた同化によって黒潮続流域におけるメソ スケール現象と大スケール変動現象について調べた。一般にadjoint 解はモデルとデータの差を最小化する方法でありnudging解よ りも連続的であり物理的に整合性が高い。adjoint解を求める 前にnudging解を求めると10日ごとのモデル解の修正幅からみ てほぼ妥当と推定される場が形成された。しかしnudging解で は(1)表層から取り込まれた渦が下層に順圧成分を引き起こし その順圧性渦がShatsky Riseの周辺を海底地形勾配にそって時 計回りに回転する循環を形成する、(2)上流側において渦同士 の相互作用による西向き移流速度が大きくなる、ことによって 同化の修正幅が大きくなる欠点があり、adjoint法を用いるとnudging 解よりも連続的な解を得た。また同化解の表層と下層の位相の ずれによって傾圧不安定インデックスを定義して状態変動の原 因と考えられる傾圧不安定について調べたところ、Shatsky Rise の西側で黒潮流速の大きい領域において傾圧不安定が顕著であ った。
熱帯西太平洋の対流圏界面領域におけるCirrusの観測 (藤原 正智) 発表要旨 :
熱帯対流圏界面領域(TTL)におけるcirrusは、成層圏へ輸送される 空気の脱水過程や熱帯大気の放射収支に重要な役割を果たしている。 しかし、観測がまだ少ないため、変動の様子や変動メカニズムに ついては理解が進んでいるとはいえない。 本研究では、海洋地球研究船“みらい”による3回の航海で得られた ライダーデータや各種気象データをもとにして、TTL cirrusの変動 とその要因について議論する。 解析の結果、大規模な気象場の観点において、TTLのcirrusの 生成消滅を支配する要素として、(1)積雲対流によるTTLへの 水蒸気、雲粒子の鉛直輸送、(2)水平風による水蒸気、雲粒子 の水平輸送、(3)Local/Regionalな気温・鉛直流変動(特に 赤道ケルビン波)、(4)中緯度下部成層圏からの乾燥空気の輸送、 が重要であることが分かった。また、これまであまり指摘のなかった、 TTL cirrusの明瞭な日変動が観測された。
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