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第 174 回 大気海洋物理学・気候力学セミナー のおしらせ
日 時: 10月 11日(木) 午前 09:30
場 所: 環境科学院 2階 講堂
発表者:須股 浩 (地球圏科学部門 気候力学分野 博士研究員)
題 目:中新世パナマ海峡通過流のメカニズム
発表者:山下 和也 (地球圏科学専攻 大気海洋物理学・気候力学コース D2)
題 目:大気境界層のストリーク気流構造の間隔
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中新世パナマ海峡通過流のメカニズム (須股 浩) 発表要旨 :
後期中新世(1000万〜500万年前)の時期には、南北アメリカ大陸を繋ぐ陸橋がなく、 太平洋と大西洋はパナマ海峡を通じて繋がっていた。古海洋研究においては、この時期 のパナマ通過流が太平洋と大西洋のどちら向きに流れるのかが重要な問題となっている。 そこで、力学的な立場からこの問題に解答を与えるべく、理論研究とその結果を検証する ための数値実験を行った。手法は、Godfrey (1989) による’island rule’ を地球を周回 するような経路に拡張し、太平洋とインド洋、大西洋を含む領域の渦度バランスからパナマ 通過流に対する制約を導くというものである。これにより、パナマ通過流の順圧成分の 向きと傾圧構造が、深層水・底層水の形成位置と量を外部パラメーターとして与えられる ことが示された。パナマ海峡が十分深い場合(中・深層水が通過可能)には順圧流は東向き となり、その強さは底層水形成量に依存する。傾圧構造は北半球の深層水形成位置と量に 依存し、大西洋で深層水形成が生じる場合には、上層で東向き、下層で西向きとなり、 太平洋で深層水形成が生じる場合には、その逆になる。パナマ海峡が浅い場合 (中・深層水が通過不能)は、順圧流の向きが北半球の深層水形成位置に依存する。 これら半解析解から得られた内容を数値実験結果と比較したところ、定性的かつ定量的に 一致することが示された。
大気境界層のストリーク気流構造の間隔 (山下 和也) 発表要旨 :
大気境界層内の様々なスケールと形を持つ組織的な流れが、地表面と大気間の 熱・運動量・物質の輸送の大部分を担っている。近年ドップラーライダーによる 観測から、地表付近(高度数百m程度以下)に水平風速が速い領域と遅い領域が流れ 方向に長く伸び交互に並んだストリーク状の組織的気流構造が見出された (Drobinski et al.,2004;藤吉ら,2005)。大気のストリーク構造の研究は数値計算 (主にLES)(Foster et al.,2006)や、分子粘性が支配する壁乱流で見られる ストリーク構造との比較によって行なわれてきたが、実際に観測された事例は ごく限られている。 ストリークの主な特性であるストリーク間隔の決定因子を探る事は、ストリーク 生成・維持機構を明らかにする為にも重要である。本研究の目的は、 ドップラーライダーを用いた長期にわたる多数の観測事例から、ストリークの間隔と 環境場の関係を明らかにすることである。またLESを用いてストリークの再現実験を 行ない観測と比較し検討を行なった。 ストリーク構造はある程度の風速(少なくとも地上風速5m/s)があればどのような 気象条件下でも普遍的に存在する。ストリークの間隔は上空程拡がり、概ね地上高度に 比例する事が分かった。また境界層が低い夜間は間隔が狭く、境界層が発達する日中は 拡がり、境界層高度との関係が明らかになった。風速との関係は明確ではなかった。 以上の結果はLES結果でも同様であった。
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