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第 173 回 大気海洋物理学・気候力学セミナー のおしらせ
日 時: 9月 20日(木) 午前 09:30
場 所: 環境科学院 2階 講堂
発表者:久保川 陽呂鎮 (大気海洋物理学・気候力学コース D3)
題 目:全球非静力学大気モデルを用いた熱帯対流圏界面領域の解析
発表者:山崎 考治 (統合環境科学部門 地球温暖化評価分野 教授)
題 目:冬と夏の北極振動
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全球非静力学大気モデルを用いた熱帯対流圏界面領域の解析 (久保川 陽呂鎮) 発表要旨 :
熱帯対流圏界面領域 (TTL: Tropical Tropopause Layer)は対流圏の空気が成 層圏に入る前に通過する領域である。成層圏オゾンに影響を与える水蒸気混合 比値はTTL内の力学場や輸送場により大きく規定される。本研究では、地球シ ミュレーター上で動く全球非静力学大気モデル (Nonhydrostaic ICosahedral Atmospheric Model, NICAM; Tomita and Satoh, 2004)の水惑星実験の出力 データを解析する。この実験は、水平分解能を数km-10数kmと非常に細かく とり、かつ全球を対象としているため、個々の積乱雲と組織化した積雲群と を同時に表現することができている。従って、TTLにおける水蒸気混合比値 に影響を与える小スケールの積乱雲から惑星スケールの波まで、あらゆる スケールのプロセスを定量的に評価することができる。 3.5km格子のスナップショット出力データでは、TTL内で赤道ケルビン波 が卓越していた。脱水に寄与すると考えられる圏界面付近の低飽和水蒸気混 合比値はケルビン波の寒位相部と、その東方に位置した背の高い積乱雲の 雲頂部で見られた。これらの脱水効果を比較した結果、ケルビン波の 寒位相部の方が約5倍ほど脱水に寄与する可能性をもっていることがわかった。 今回の発表では、これらの結果に加え、水惑星実験 7.0km格子の、3時間 平均値1ヶ月間の時系列データの解析結果も議論する。
冬と夏の北極振動 (山崎 考治 ) 発表要旨 :
北極振動は、北半球冬季に卓越する変動であるが、夏季にも冬ほど強くないが 卓越する。ただし、南北スケールは小さくなる。北極振動は擾乱と平均流の 正のフィーバックにより卓越するので擾乱の活発な緯度が夏季には北上する ためである。夏・冬の北極振動には正のトレンドがある。特に、これまで注目 されていなかった夏のトレンドについて述べる。 冬の北極振動(または北大西洋振動)と夏の北極振動とは統計的に有意な正の 相関がある。この相関は太陽活動の11年周期によって変調されており、太陽活動の 極大期に大きい。これをもたらす要因(雪氷やオゾン)について議論する。
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