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第 170 回 大気海洋物理学・気候力学セミナー のおしらせ

日 時: 6月 21日(木) 午前 09:30
場 所: 環境科学院 2階 講堂

発表者:内本 圭亮 (環オホーツク観測研究センター・研究員)
題 目:Anticyclonic eddy caused by the Soya Warm Current in an Okhotsk OGCM

発表者:水田 元太 (地球圏科学部門 大気海洋物理学分野 助教)
題 目:東向ジェットと再循環からのロスビー波の放射

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Anticyclonic eddy caused by the Soya Warm Current in an Okhotsk OGCM (内本 圭亮) 発表要旨 :

  
    オホーツク海南部の千島海盆には渦が多数存在することが知られている.そ 
  の多くが高気圧性の渦であるが,構造や成因は同じではなく,数種類の渦が存 
  在する (M. Itoh et al.).その一つが Wakatsuchi and Martin (1991)によっ 
  て観測されている (以下ではこの渦を WM eddy と記す).WM eddy は千島海盆 
  の西部にできる渦で,初夏にはなく秋には存在するという特徴があり, 
  Wakatsuchi and Martin は,この渦は宗谷暖流水が千島海盆に流れ込むことに 
  よって形成されると考えた. 
  
    本研究では,オホーツク海の OGCM を用いて数値実験を行い,WM eddy と宗 
  谷暖流の流量の関係について調べた.モデルの中では,宗谷暖流の流量を津軽 
  海峡に与える風応力を変えることによって増減させた.宗谷暖流の流量が小さ 
  いときははっきりした渦は形成されず,流量の増加とともに WM eddy は国後 
  島にくっついた状態で大きくなり,直径が 80 km くらいになると,国後島か 
  ら離れ北に移動するという結果になった.この実験結果から,日本海から流入 
  する低密度の宗谷暖流水が下流の海峡から流れ切らないときに,宗谷暖流水が 
  千島海盆にたまって WM eddy が形成されるのではないかと考えた.そこで, 
  宗谷海峡の流量と国後水道・根室海峡の流量の差を調べたところ,WM eddy 形 
  成と流量差にはよい関係が得られた. 
  

東向ジェットと再循環からのロスビー波の放射 (水田 元太 ) 発表要旨 :

    黒潮や湾流といった西岸境界流やその続流、再循環域では強い擾乱が存在しそ 
  の一部はロスビー波となって遠方へ放射される(Thompson and Luyten 1976; 
  Hogg 1981; Bower and Hogg 1992)。この様なロスビー波は運動量を輸送する 
  ことで西岸境界流の再循環の形成に重要であると示唆されている(Haidovgel 
  and Rhines 1983; Hogg 1988; Rizzoli et al. 1995)。こうしたロスビー波の 
  波数などの特性は波動の運動量輸送や大陸斜面での屈折などの基本性質を決め 
  るため特に重要である。 
  
    そこで3次元プリミティブ方程式系の数値モデルを用いて、理想化された東向 
  きジェットとその再循環から放射されるロスビー波の特性を詳しく調べた。モ 
  デル領域の西側境界からジェットを与えると、ジェットの南北両側に再循環セ 
  ルが形成され、その流速と南北スケールは従来の研究で示されているのと同様 
  に、コリオリ係数の南北勾配をbeta、西側境界でのジェットの流速をUとして、 
  それぞれU, (U/beta)^1/2に比例する。 
  
    流速の擾乱成分はジェットや再循環の見られない遠方に達し、その周波数空間 
  上でのEOF(Wallace and Dickinson 1972)の第1成分の波数は順圧ロスビー波の 
  分散関係にほぼ従う。擾乱の西進位相速度は振動数によらずほぼ一定で再循環 
  セルの中の流速に近い。ロスビー波の西進位相速度がこの値に達し得る振動数 
  には上限が存在し、それ以上の振動数ではロスビー波の放射は見られない。こ 
  れらのロスビー波の波数、振動数はそれぞれ(beta/U)^1/2, (U*beta)^1/2で規 
  格化すると相似となる。また再循環セルを形成する渦位フラックスにはロスビ 
  ー波が放射される周波数帯の運動からの寄与が支配的である。 

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連絡先

深町 康 @北海道大学低温科学研究所
寒冷海洋圏科学部門 海洋動態分野
mail-to:yasuf@lowtem.hokudai.ac.jp / Tel: 011-706-7432