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第 162 回 大気海洋物理学・気候力学セミナー のおしらせ

日 時: 10月 19日(木) 午前 09:30
場 所:低温科学研究所 新棟 3階 講堂

発表者:渡部 雅浩 (地球圏科学部門 大気海洋物理学分野 助教授)
題 目:海域間結合と赤道暖水域の形成

発表者:青木 邦弘 (大循環力学講座・D3)
題 目:OFESデータを用いた中緯度傾圧ロスビー波の解析

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海域間結合と赤道暖水域の形成 (渡部 雅浩) 発表要旨 :

  
   太陽からの日射は,本来経度方向に依存性をもたず,ある緯度で地球表面を 
 一様に暖める.一方で,熱帯太平洋の気候学的海面水温は東西非一様性が 
 強く,西側の暖かい領域は warm pool (暖水域),東側の冷たい領域は 
 cold tongue (冷舌)と呼ばれている.この暖水域/冷舌のコントラストは, 
 いわゆる Bjerknes フィードバックによって理解される. 
   しかしながら,暖水域は実際には海洋大陸を越えてインド洋まで広がっており, 
 降水,風応力などの平均分布を見ると,暖水域形成には太平洋で閉じた力学だけ 
 ではなく,熱帯太平洋とインド洋の相互作用が重要であることが示唆される. 
 そこで,暖水域の形成必要条件や安定性を理解するために,2海洋間の結合を 
 表現する低次の大気海洋結合系および中程度の複雑さをもつ大循環モデルを 
 用いて数値実験および考察を行った. 
  
  

OFESデータを用いた中緯度傾圧ロスビー波の解析 (青木 邦弘) 発表要旨 :

  
 大気に対する海洋の応答において重要な傾圧モードのロスビー波について、近年、 
 TOPEX/POSEIDONによる海面変位の観測結果から、中緯度における傾圧ロスビー波 
 が古典理論の予想よりも早く伝播していることが示された。この過剰な位相速度 
 をもたらす要因として、傾圧流および海底地形の影響が理論的に示唆されている。 
 本研究では、渦解像モデルであるOFESによる数値シミュレーション結果を用いて、 
 位相速度だけでなく鉛直構造についても理論解との比較を行い、中緯度傾圧ロス 
 ビー波に対する諸効果の影響を調べた。 
  
 OFESの海面変位には明瞭な西方伝播が見られるが、波の振幅や規模は時空間的に 
 不均一であるため、コンポジット解析を行った。最も明瞭な伝播が見られる32°S 
 において波のコンポジットを取った結果、その位相速度は古典理論の予想よりも 
 1.2〜1.5倍大きいことが明らかとなった。実際の波は傾圧流の存在する場を伝わ 
 るため、それによる影響を考慮して理論解を求めると、実際の波の位相速度に近 
 い値を取ることが分った。しかし、鉛直構造の指標として同期間においてコンポ 
 ジットされた南北流速場は、海底付近において流速がゼロとなっており、海底地 
 形の影響を考慮した理論解に類似した鉛直構造を持つため、海底地形の効果も重 
 要であると考えられる。しかし、傾圧流および海底地形の両方の効果を考慮した 
 理論値は、実際の波の位相速度を超えてしまう。そこで、相対渦度による位相速 
 度の減少を調べた結果、位相速度に対する相対渦度の影響が10〜20%程度と無視で 
 きないことが明らかとなり、これを考慮すると、実際の波の位相速度をほぼ説明 
 することが分った。 
  
 さらに、緯度毎の時空間スペクトル解析により推定された海面変位の位相速度は、 
 傾圧流、海底地形および相対渦度の効果を考慮した理論値に従うことから、32°S 
 における結果が広範囲において成り立っていることが示唆された。したがって、 
 中緯度海洋の傾圧ロスビー波は、傾圧流および海底地形、さらに、相対渦度の影 
 響を受けて伝播しているものと考えられる。 
  
  

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連絡先

水田 元太 @北海道大学地球環境科学研究院
地球圏科学部門 大気海洋物理学分野
mail-to:mizuta@ees.hokudai.ac.jp / Tel: 011-706-2357