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第 161 回 大気海洋物理学・気候力学セミナー のおしらせ

日 時: 10月 12日(木) 午前 09:30
場 所:低温科学研究所 新棟 3階 講堂

発表者:草原 和弥 (極域大気海洋学講座 D3)
題 目:南極沿岸の水位変動のメカニズム

発表者:石渡 正樹 (地球環境科学研究院 気候力学分野 助手)
題 目:灰色大気の南北 1 次元エネルギーバランスモデルの多重解

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南極沿岸の水位変動のメカニズム (草原 和弥) 発表要旨 :

  
  南極沿岸の10日-1年程度の水位変動は周極的にコヒーレントに変動する特徴が観測か 
 ら示されており、その変動は南極振動(AAO) と強く関係していることが知られている。 
 観測や数値モデルの沿岸水位を解析すると、波数ゼロのコヒーレントな水位変動は、 
 AAOに伴う波数ゼロの外力が卓越するということだけでは説明がつかない程卓越した 
 変動成分であることがわかった。 
 本研究の目的は南極沿岸の水位変動のメカニズムを観測及び数値モデルを用いて明ら 
 かにすることである。さらに、南極沿岸水位の変動を定量的に説明できる解析解も導 
 出した。 
  コヒーレントな変動は南極沿岸の陸棚地形の捕捉された現象であることが数値モデル 
 結果からわかった。また、数値モデルでは20日よりも短い周期帯において、波数1, 2, 
 3 で西向擾乱が南極沿岸に捕捉されて伝播していることも確認された。これらの地形 
 に捕捉された現象を理解するために、周極的な地形での水位変動の解析解を導出し、 
 観測水位及び数値モデル結果と比較した。解析解を求める際、岸沿い方向には周期境 
 界条件を課した。このことにより、陸棚波として伝播するモードだけでなく、コヒー 
 レントなモードの解も導出されることになる。南極沿岸で観測されるコヒーレントな 
 水位変動は5-10 日程度のダンピングを考慮した波数ゼロの解析解によって定量的に説 
 明できた。西方伝播する擾乱は南極沿岸を左手に見て伝わる強制陸棚波によって説明 
 できた。南極沿岸の水位変動を特徴づけるコヒーレントな変動は AAOに伴う波数ゼロ 
 の外力が卓越することと波数ゼロの水位応答が低振動数帯で大きくなることの二つの 
 要素によって説明できることがわかった。 
  
  

灰色大気の南北 1 次元エネルギーバランスモデルの多重解 (石渡 正樹) 発表要旨 :

  
   南北 1 次元エネルギーバランスモデル (EBM) を用いて,種々の太陽定数 
  の値における灰色大気の多重解を調査した.  用いた EBM は, 長波放射の計 
  算方法を除けば, Sellers (1969) のモデルと同様のものである.  長波放射 
  は, 暴走温室状態も表現するために, Nakajima et al. (1992) の灰色大気 
  鉛直 1 次元放射対流平衡解を用いて決定する.  この EBM を用いて平衡解 
  および時間発展解を求めることにより, 全球凍結解・部分凍結解・氷無し平 
  衡解に加えて暴走温室状態を含む多重解が存在し得ることが確認された. 全 
  球凍結解と部分凍結解の分岐構造に関しては, 大極冠不安定と小極冠不安定 
  が発生しており, 大雑把には Sellers (1969) の結果と似ていると言える. 
  しかし, 氷無し平衡解の分岐構造は Sellers (1969) の結果とは異なる. 氷 
  無し平衡解が存在できる太陽定数には上限値が存在し, その上限値を越えた 
  条件下では氷無しの状態は暴走温室状態に至る.  また氷無し平衡解には 2  
  種類の分枝が存在し, 一方は安定平衡解, もう一方は不安定平衡解となる. 
  
  
  

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連絡先

水田 元太 @北海道大学地球環境科学研究院
地球圏科学部門 大気海洋物理学分野
mail-to:mizuta@ees.hokudai.ac.jp / Tel: 011-706-2357