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第 157 回 大気海洋物理学・気候力学セミナー のおしらせ
日 時: 5月 18日(木) 午前 09:30
場 所:環境科学院 2階 講堂
発表者:大竹 秀明 (極域大気海洋学講座 D3)
題 目:日本海北部に発生する太い筋雲の維持過程
発表者:藤原 正智 (地球圏科学部門 気候力学分野 助教授)
題 目:熱帯における成層圏対流圏大気交換問題と熱帯圏界面cirrus
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日本海北部に発生する太い筋雲の維持過程 (大竹 秀明 ) 発表要旨 :
日本海北部では冬季、シベリアからの寒気の吹き出しに伴い、筋状雲が発生 する。特に太く発達した筋雲が北海道西岸沖の海上で発生することが知られて いる。Muramatsu (1979)はロシア沿海州にあるシホテアリン山脈の特定山地が、 太い筋雲の発生のトリガーの役割りをすると指摘した。しかし、これまで筋雲 が太く維持される過程に注目した研究は行われていない。 そこで本研究では、まず日本海北部で特に太い筋雲が発生した事例に注目し、 環境場の解析を行った。2005年1月27日の総覩場の特徴は, 低気圧が北海道南 部を通過し、やや寒気の吹き出しが弱くなっていたが、上空には強い寒気(-40 °C以下) が入り込んでいた。GMS可視画像からは、周辺の筋雲よりも幅の広い 筋雲が北海道北部へ入り込んでいた。QuikSCATによりこの太い筋雲周辺の風の 場(海上風)を調べると, 太い筋雲の北(南)側で相対的に風速が弱(強)い特 徴が見られ, 南北収束が顕著であった。 次に、メソモデル(ARPS; Xue et al. 2000)を用いた再現実験を行った。同 日のECMWF客観解析データを初期値とし、下部境界条件にはSST気候値(1月) を 与えた。GMS可視画像で確認された太い筋雲の発生位置とほぼ同じ位置で、雲 バンドが再現された。典型的な冬季の寒気の吹き出しの事例に相当する実験で も, 太い筋雲に相当するバンド状の上昇流域が形成されていた。相対風(一般 風から初期の風の場を差し引いた風) は, モデル領域の北部(サハリン沖)で は相対的に弱風で北風偏差, 南部(北海道沖)で強風で西風偏差を示しており、 日本海北部海上ではメソスケールの収束域(前線構造)が形成されていた。 風上山地の地形効果がこのメソスケールの収束域の形成に重要であると考え られるが、太い筋雲の維持過程にも影響を与えていることが示唆される。本発 表では、数値モデルの結果を用いてFrontogenesis解析の結果を紹介し、この 前線構造の維持過程について議論する。
熱帯における成層圏対流圏大気交換問題と熱帯圏界面cirrus (藤原 正智) 発表要旨 :
本発表では、1) 熱帯における成層圏対流圏大気交換に関する研究の歴史、 2) 私自身のこれまでの赤道ケルビン波に着目した研究、および、 3) 最近取り組み始めている熱帯圏界面領域のcirrusの観測研究、 について議論する。 1) Brewerは1949年の論文で、2つの仮説、「熱帯圏界面において水蒸気の 除去(脱水)が生じている」、「成層圏内に子午面循環が存在する」を 提唱した。それぞれの仮説をめぐってどのような経緯で議論が展開されて きたか、おおまかな流れを紹介した上で、現在の理解を説明する。 この流れの中で一貫してきたのは、「成層圏の水蒸気濃度の値をいかに 定量的に説明するか」ということであった。 2) 私自身は、熱帯対流圏の大気化学研究を目的としたインドネシアでの オゾンゾンデ定常観測に関わるところから研究活動を開始した。「観測 された顕著なオゾン変動を理解する」ことが研究の方針であった。赤道 ケルビン波は、(実はあまりよく認識されていなかったが)熱帯対流圏 界面領域で卓越する大規模擾乱である。従って、オゾン、水蒸気、乱流 強度などのケルビン波による変動を観測的に順に明らかにしていくという 私の活動自体はごく"自然"なものであったと考える。これを、1)の枠組の 中にどう位置付けるか、うまく位置付けられるのか、考えてみたい。 3) "水蒸気除去"は雲粒子の形成と落下によってはじめて完結する。近年、 熱帯対流圏界面領域にcirrusがかなりあまねく存在していることが明らか になりつつある。現在私は、幾つかのライダー(レーザー光を用いた微粒子 等のリモートセンシング機器)観測グループと協力することで、こうした 熱帯cirrusの研究を各地で始めている。どうやら大規模擾乱による変動が やはり顕著なようである。活動の現状を紹介し、今後の課題について 議論する。
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