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第 155 回 大気海洋物理学・気候力学セミナー のおしらせ

日 時: 1月 26日(木) 午前 09:30
場 所:低温科学研究所 新棟 3階 講堂

発表者:森 正人 (大循環力学講座 D2)
題 目:PNAのライフサイクル

発表者:北内英章 (地球環境フロンティア研究センター)
題 目:1.海洋海氷結合循環モデルによるラブラドル海のモデリング, 2.回転極冠上の定常ストークス流の解析解

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PNAのライフサイクル (森 正人) 発表要旨 :

  
 冬季北半球中高緯度対流圏における,1ヶ月からそれ以上の時間スケールを持 
 つ大気変動の中には,地理的に固定され,再現性,持続性を持ったいくつかの 
 低周波偏差パターンが存在し,テレコネクションパターンと呼ばれている.そ 
 れらの力学的な生成・維持過程を明らかにするためにこれまで数多くの研究が 
 なされ,いくつかの理論が提唱されてきた.それらは大別すると,(1)特定の 
 波源(外部強制)に対する大気の応答とするもの,(2)気候学的流れの東西非対 
 称性に起因する準定常場の変化とするもの,(3)短周期の非定常擾乱によるフィー 
 ドバックによるものの,3つに分類される.本研究で注目する 
 PNA(Pacific/North American) テレコネクションパターン(Wallace and 
 Gutzler 1981)に関しては,特にENSOとの関係が強調されている.ENSOイベン 
 ト時にPNAがよく現れることが昔から知られており,PNAはENSOに伴う線形応答 
 (上記(1)のプロセス) であるとする見方が一般的であった.しかし現在では, 
 熱帯域の強制はPNAを直接励起するのではなく,出現確率やその符号に重要で, 
 中高緯度の内部力学(上記(2),(3)のプロセス)が,月・季節平均場で見たPNA 
 の本質だと考えられている. 
  
 しかし,本来PNAが持つ短い時間スケール(10日〜2週間) で見た時に,ENSOの 
 ような,わりに長い時間スケールを持つ強制との関係はよく分からないし,時 
 間発展の過程で何が起こっているのかもよく分からない.そこで本研究では, 
 日平均データを用いて,PNAのライフサイクルについて詳細に調べることを目 
 的とする.PNAの時間発展に付随する力学過程が明らかになれば,PNAの予報に 
 関して何らかの知見が得られると思われる. 
  
 今回はまず,10日〜2週間程度のスケールを持つPNAの一般的な描像を示し,次 
 にbudget解析の結果と,PNAのtriggeringに関する解析の結果を示す. 
  

1.海洋海氷結合循環モデルによるラブラドル海のモデリング, 2.回転極冠上の定常ストークス流の解析解 (北内英章) 発表要旨 :

  
 1.「海洋海氷結合循環モデルによるラブラドル海のモデリング」 
  
 北部北大西洋ラブラドル海での中層水(Labrador Sea Water,   LSW)形成は, 
 全球規模の熱塩循環を通して,長期の気候変動に影響を及  ぼすと考えられる. 
 LSWは深層対流(deep convection)によ  り形成されるが,深層対流の起因には 
 表層付近の密度成層の安定性が重  要である.中規模渦(20~50 km)による熱塩 
 輸送がその密度成層の  安定性に関与していると考えられている.本研究の目 
 的は,渦解像海洋  海氷結合循環モデルを用いて,LSW形成における中規模渦 
 の役割  に関して理解を深めることである.セミナーでは,我々のラブラドル 
 海  モデリングの現状を報告する. 
  
 2.「回転極冠上の定常ストークス流の解析解」 
  
 自転する球を,その自転軸に垂直な平面で切ることにより,その平面の  上部 
 /下部にできる球面の一部領域(極冠)上の定常  線形粘性流の解析解を求めた. 
 同種の解は,今脇と高野(1974)に  より近似的に得られたが,本研究により厳 
 密に求められることが示さ  れ,彼らの近似解を支持する結果となった. 
  

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連絡先

水田 元太 @北海道大学地球環境科学研究院
地球圏科学部門 大気海洋物理学分野
mail-to:mizuta@ees.hokudai.ac.jp / Tel: 011-706-2357