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第 154 回 大気海洋物理学・気候力学セミナー のおしらせ
日 時: 1月 19日(木) 午前 09:30
場 所:低温科学研究所 新棟 3階 講堂
発表者:草原 和弥 (極域大気海洋学講座 D3)
題 目:南極沿岸におけるコヒーレントな水位変動の力学
発表者:木村 慎吾 (大気海洋物理学・気候力学コース M1)
題 目:Saito et al.(2001) -論文紹介-
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南極沿岸におけるコヒーレントな水位変動の力学 (草原 和弥) 発表要旨 :
南大洋の海洋変動は観測及びモデルから一年以内の周期帯において順圧的に 変動することが知られている。南極沿岸の水位は周極的にコヒーレントに変 動しており、南極振動(AAO)と強い負の相関関係にある[Aoki, 2002]。また その変動は数値モデルから南極周極流(ACC)の流量変動の指標なることが示 唆されている[Hughes et al. 1999, 2003]。 南極沿岸の水位変動をACCの指標とする場合においても、まずその変動を決定 する力学的背景を理解することは不可欠な問題であるが、その水位変動の力 学に関しては定性的な議論があるだけでよくわかっていない。 本研究は南極沿岸の水位変動の力学を定量的に説明することを目的としている。 球面順圧モデルを使用した。モデルの水平解像度は経度方向に 1°、緯度方向 に 0.5°である。北限の壁は赤道であり、南緯30°〜0°には粘性を緩やかに 加させた粘性境界領域を設けた。モデルに与えた風応力はERA40の地上10m風か ら計算した。海洋に入力される応力の計算に海氷の効果は考慮していない。 モデル海底地形はETOPO5から計算した。モデルは順圧的な時間変動成分に着目 するため、各グリッドにおいて一年の移動平均を引いたアノマリーを外力とし て駆動した。解析には1994年〜1999年の六年間の毎日の日平均値を使用した。 南極沿岸の水位データはSyowa, Mowson, Davis, Casey, Faradayの五地点を使 用した。水位データは気圧補正、潮汐成分除去を行い、毎日の水位データを作 成した。 観測(五地点)及びモデル(沿岸360地点)の水位変動に対してEOF解析をすると、 コヒーレントな水位変動が主成分であり、その寄与率はそれぞれ76%、79%で あった。順圧モデルは南極沿岸のコヒーレントな水位変動をよく再現した。 モデル内において主成分であるコヒーレントな変動との相関係数の水平分布図 から、その水位変動は南極沿岸の陸棚及び陸棚斜面に捕捉されていることがわ かった。 南大洋の大気変動は波数ゼロのAAOにより特徴づけられている。上記の陸棚及び 陸棚斜面に捕捉された水位変動はコヒーレント(波数ゼロ)な風応力による強制 陸棚波 [Gill and Schumann, 1974]であると考え、地形及び風応力を単純化し た解析解を求めた。地形は指数関数で近似し、風応力は南極沿岸の岸沿い方向 成分を周極的に平均したものである。コヒーレントな風応力が作用する場合を 考えるので、求める解析解は沖方向と時間の関数になる。解析解による水位は 沖方向のモードと〜200日周期帯のフーリエ成分から計算した解の重ね合せによ って表現される。解析解は減衰項なしの場合と減衰項ありの場合(ダンピングタ イムスケール 20日、 5日、 1日)を求めた。観測の南極沿岸水位変動は10日〜 200日の周期帯において5日のダンピングタイムを考慮した強制陸棚波の解の足 し合わせで説明できることがわかった。
Saito et al.(2001) -論文紹介- (木村 慎吾) 発表要旨 :
Saito, K., T. Keenan, G. Holland, and K. Puri, 2001: Numerical Simulation of the Diurnal Evolution of Tropical Island Convection over the Maritime Continent. Mon. Wea. Rev., 129, 378-400.
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