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第 149 回 大気海洋物理学・気候力学セミナー のおしらせ

日 時: 10月 27日(木) 午前 09:30
場 所:低温科学研究所 新棟 3階 講堂

発表者:植田 宏昭 (筑波大学  生命環境科学研究科)
題 目:モンスーンの「過去(1)」・「現在(2)」・「未来(3)」

発表者:水田 元太 (北海道大学地球環境科学研究院)
題 目:The variability of the East Sakhalin Current induced by winds over the continental shelf and slope.

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モンスーンの「過去(1)」・「現在(2)」・「未来(3)」 (植田 宏昭) 発表要旨 :

  
 1)  アジアモンスーンの成立過程を季節変化の視点から考察する。特にチベッ 
 ト高原の役割に対する理解の歴史的変遷を非断熱加熱(Q1, Q2)から紹介する 
 (15 min)。 
  
 2) モンスーンの変動と広域の気候変動とのリンクについて、ENSO 
 に関係したインド洋での大気海洋相互作用(e.g., IOD)に触れ、プレモンスー 
 ン期の熱源応答によるアジア大陸上での大気陸面相互作用(Afgan 
 drought-strong monsoon)と広域アジアの気候変動(含'04日本の暑夏)とのリ 
 ンクについて、CGCM研究を用いた研 究結果を紹介する (15 min)。 
  
 3)  IPCC-AR4に向けた地球温暖化multi-model ensemble結果に基づく、アジア 
 モンスーンの変動予測について、循環場と降水のパラドックスに焦点をあて、二 
 十一 世紀後半の水資源問題を考える(15 min)。 
  
  

The variability of the East Sakhalin Current induced by winds over the continental shelf and slope.(水田 元太) 発表要旨 :

  
  オホーツク海にある東カラフト海流の長期流速観測の結果を周波数空間上のEOF 
 という手法を用いて解析した。それによると、数日から数10日周期の流速変動の 
 第1、第2主成分はそれぞれ陸棚上と大陸斜面上の流速変動に相当する。これらは 
 東カラフト海流に見られる2つのコアの変動に対応する。第1主成分は第1モード 
 の沿岸捕捉波に相当する。第2主成分は第2モードの沿岸捕捉波に似た構造を持 
 つ。これらの主成分と風応力のクロススペクトルをとると、第1主成分の運動は 
 低周波数帯では岸に平行な成分の風と沿岸捕捉波の共振によって励起されている 
 ことが示される。より高周波数では第1主成分と相関を持つ風(クロススペクトル 
 を主成分の振幅で割ったもの)は空間的に一様な位相を持つ。このことはこの周 
 波数帯で第1主成分がfreeな第1モードの沿岸捕捉波よりも速く伝わることと整合 
 的である。 
  第2主成分は海盆中央付近の風応力curlと相関が高い。また、この主成分は低周 
 波数では大陸斜面上に捕捉されているが、高周波数では陸棚上で大きな振幅を持 
 つ。この様な構造の周波数依存性は、Chapman and Brink (1987)によって数値的 
 に調べられた、沖合の深い所にあるforcingによって励起される運動の性質と整 
 合的である。第2主成分と相関を持つ風応力curlの位相は岸を右手に見る方向に 
 伝播し、第2主成分の運動が等深線に沿って伝播したことを示唆する。この風応 
 力curlは第1-3モードの陸棚波と共振する成分を持つ。時間があればその他の簡 
 単な解析の結果も紹介する。 
  

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連絡先

水田 元太 @北海道大学地球環境科学研究院
地球圏科学部門 大気海洋物理学分野
mail-to:mizuta@ees.hokudai.ac.jp / Tel: 011-706-2357