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第 141 回 大気海洋圏物理系セミナー のおしらせ

日 時: 11月 25日(木) 午前 9:30
場 所:低温科学研究所 新棟 3階 講堂

発表者:馬場 賢治 研究員 (低温科学研究所 寒冷海洋圏科学部門 )
題 目:南極海における海氷の季節内変動について

発表者:西川 史朗 (大循環力学講座 )
題 目:混合層フロントと低渦位水のサブダクション

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南極海における海氷の季節内変動について (馬場 賢治 研究員) 発表要旨 :

  
  南極海は季節海氷域であり、その消長の規模は非常に大きい。このため、海 
 氷の広がりに関する研究は多くなされてきた。大半は、季節変動や年々変動に 
 ついてものであった。しかしながら、海氷は日々漂流し、生成融解が行われて 
 いる。そして、その存在は大気海洋間の様々なフラックスに影響を与える。大 
 気場では、季節内変動があることが知られており(kidson,1991ほか)、この影 
 響を受けている可能性がある。Baba and Wakatsuchi(2001)では、冬季の低緯 
 度海氷縁付近の海氷密接度データを用いて、海氷のアノマリーが10-15日で東 
 進していることを求めた。しかしながら、大気場との係わりについては言及で 
 きていなかった。そこで本研究では、海氷の季節内変動と大気の関係を求めた。 
 また、海氷変動が起こる過程を調べた。まず、1992年から2001年の海氷密接度 
 を用いて、CEOF解析を行い海氷の統計的特徴を示し、海氷密接度変動を引き起 
 こす風速と漂流速度との回帰を求め、それぞれの関係を求めた。その結果、海 
 氷密接度変動は、第1モードにおいて西南極海域での変動が大きく、東南極海 
 域では小さいことが求められた。変動の大きい西南極海域では、風速と漂流速 
 度の南北成分で対応が良かった。さらに、海氷密接度変動のうちの漂流による 
 効果をモデルを用いて見積もると20%程度であった。さらに、海氷縁における 
 海氷拡大速度と漂流速度を比較した結果、漂流速度は海氷拡大速度の1/4程度 
 しかなかった。これら漂流の効果の割合を求めた両者の結果から、漂流による 
 効果は小さく、現場海域での海氷生成/融解が卓越していることが示唆された。 
  

混合層フロントと低渦位水のサブダクション (西川 史朗 ) 発表要旨 :

  
 一般に, 海洋表層混合層は低緯度域で浅く高緯度域で深い分布をしている 
 が, 中緯度の亜熱帯循環域の北西部において混合層深が急激に変化する領 
 域が存在することが知られており, 混合層フロントと呼ばれている.  
  
 混合層フロントは海洋上層の循環場(流速場・密度場)の決定に重要な役割 
 をしていることが近年の研究により指摘されている. Kubokawa and Inui  
 (1999), Kubokawa (1999)は, 各等密度面上で混合層フロントにおいて低 
 渦位水が形成され, それら低渦位水塊が亜熱帯反流を駆動するというメカ 
 ニズムを示した. 最近の水塊研究においては, そのような混合層フロント 
 において形成される低渦位水が, 亜熱帯モード水(STMW)や中央モード水 
 (CMW)などの現実に見られるモード水の主な起源であろうということが指 
 摘されている.  
  
 このように, 混合層フロントが海洋上層構造に与える影響については近年 
 研究がいくつかなされている一方で, 混合層フロントそれ自体の形成につ 
 いてはあまり注目されてこなかった. 本研究では, 海洋大循環モデル 
 (OGCM)を用い, 理想化された設定の下で混合層フロントについて調べた.  
  
 これまでに, 混合層フロントの位置の決定に関して上層流速ベクトルと海 
 面等密度線の関係が重要らしい, ということを出発点にして, 混合層フロ 
 ントの位置, 混合層フロントにおけるサブダクション過程, 混合層フロン 
 トの形成メカニズムなどついて考察を行ってきた. 今回の発表では, 定常 
 場(季節変化なし)・渦非解像の条件における混合層フロントについてまと 
 めた結果を発表する. もし時間に余裕があれば, 現在行っている実験(渦 
 許容モデルを用いた実験, 季節変化を入れた実験)についても簡単にご紹 
 介する.  
  

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連絡先

川島 正行 @北海道大学大学院地球環境科学研究科
大気海洋圏環境科学専攻 物理系
mail-to:kawasima@lowtem.hokudai.ac.jp / Tel: 011-706-6885