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第 136 回 大気海洋圏物理系セミナー のおしらせ
日 時: 10月 14日(木) 午前 9:30
場 所:低温科学研究所 新棟 3階 講堂
発表者:時長 宏樹 (大循環力学講座)
題 目:中緯度海流フロントに伴う下層大気循環の応答
発表者:田村 岳史 (極域大気海洋学講座)
題 目:SSM/Iによる南極沿岸ポリニヤの氷厚推定アルゴリズムの開発
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中緯度海流フロントに伴う下層大気循環の応答 (時長 宏樹) 発表要旨 :
中緯度帯における海盆スケールの海上風速と海面水温の関係は,時間変動場にお いて海上風速が強い(弱い)領域で海面水温が低い(高い)という空間構造によ って特徴付けられてきた.これは風速変化に伴う潜熱放出が海面水温の変化に大 きく寄与しており,大気から海洋への強制が中緯度帯において支配的であること を示唆している.一方,近年の高解像度人工衛星観測データによると、中緯度海 流フロント域の一つである黒潮続流においては,海面水温フロントの冷(暖)水 側で海上風速が弱い(強い)という空間構造の存在が明らかになりつつある.こ のような空間構造は潜熱放出の原理では説明することができず,黒潮続流におい て海上風速が海面水温の分布によって変調を受けていることを示唆している.し かしながら、中緯度帯独特の強い大気強制や海上での観測データが少ないという 問題点もあることから、中緯度帯の海洋が大気へ及ぼす影響については気候学的 な場だけではなく時間変動の場についても多くの不明な点が残されている。そこ で本研究では、中緯度海流フロントに伴う大気の応答を調べるために以下2つの 解析を行なった。 第一の解析では、中緯度海流フロント域の1つであるブラジル海流−マルビー ナス海流フロントに対して、高解像度の人工衛星データと船舶観測データを用い て海面付近の安定度と海上風速の関係を調べた。その結果、ブラジル海流−マル ビーナス海流フロントでは、気候学的な場と経年変動の場において海面水温が高 い(低い)海域では海面付近の安定度が小さく(大きく)なり、海上風速が強( 弱)くなるという関係が見られた。この関係は海面付近の安定度が大気下層の鉛 直混合の強さを変化させることによって下層風の加減速に大きく寄与することを 示唆している。 第二の解析では、黒潮続流域においてGPSラジオゾンデ観測を行い、海面水温 フロント近傍での気圧・気温・湿度・風向風速の鉛直構造を調べた.その結果、 観測期間を通して海面水温が高い(低い)海域で海面水温と海上気温の差も大き く(小さく)なるという有意な正の相関関係が見られた. この海面水温と海上 気温の差が1度以下のときを安定、5度以上のときを不安定として行なったコンポ ジット解析では、海面付近が安定(不安定)なときに仮温位と風速の鉛直シアが 大きく(小さく)なることが分かった。この観測結果は、黒潮続流において鉛直 混合メカニズムが作用していることを示唆している.大気の安定度が大きい(小 さい)場合は大気境界層内の鉛直混合が抑制(促進)され,運動量の混合も抑制 (促進)される.その結果として,海上風速は周辺よりも小さく(大きく)なり ,大気の安定度が大きい(小さい)ときに風速の鉛直シアも大きく(小さく)な ると考えられる.この観測事実は,黒潮続流における大気と海洋の関係が一方通 行ではなく,双方向であることを示唆している.
SSM/Iによる南極沿岸ポリニヤの氷厚推定アルゴリズムの開発 (田村 岳史) 発表要旨 :
南極沿岸ポリニヤは、主に風によって海氷が運ばれることが原因で出現し 維持される。そのため、ここでは冬季を中心に海氷が活発に生産されている。 この沿岸ポリニヤにおける海氷生産は南極の海氷総生産や南極底層水形成に 対して重要な役割を果たしていると考えられている。しかしながら、現場観 測が極めて難しい海域であるため、海氷生産に関して定量的には明らかにな っていない。これを明らかにするには、雲や昼夜の影響を受けにくいマイク ロ波放射計のデータを用いて沿岸ポリニヤを検出し、表面熱収支を計算して 見積もるのが現地点で最も有効な方法である。 沿岸ポリニヤは空間的時間的に大きく変動するので、その大きさ及びそこ での大気-海洋間熱交換を一日単位で測る必要がある。寒気の厳しい南極の 沿岸ポリニヤでは開水面を維持することは難しく、すぐに結氷が生じ、現実 には氷厚5〜20cm程度の薄氷で覆われていると考えられている。従来のNASA team algorithm等のように海氷密接度のみを求めるアルゴリズムでは、沿岸 ポリニヤを正確に判定することはできない。そこで本研究では、AVHRR表面 温度データから導出した熱的氷厚を比較検証データとして、SSM/Iマイクロ 波データによる氷厚推定アルゴリズムを開発した。 AVHRR表面温度データを用いて熱収支計算をすることによって、沿岸ポリ ニヤでの熱フラックスと氷厚を求めた。大気-海洋(海氷)間熱収支は、南 極海域において現時点で最も適当と考えられる経験式を使用して放射フラッ クス・乱流フラックスを求め、海氷表面で熱収支がバランスするように海 氷内の熱伝導フラックスを考慮し、これから氷厚を推定している。これを ウェッデル・ロス海沿岸やアデリー海岸などの主要地域において多数の事 例で行い、SSM/Iの輝度温度データと比較することで、SSM/Iから氷厚を推 定している。0〜10cmまでは85GHz、10〜20cmまでは37GHz輝度温度データを 用いて氷厚を決定している。薄氷域との区別が難しい定着氷域の除去や、 大気の影響を大きく受けているの部分の除去については、独立した方法を 用いて対処している。
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