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第 134 回 大気海洋圏物理系セミナー のおしらせ
日 時: 5月 20日(木) 午前 9:30
場 所:地球環境科学研究科 2階講堂
発表者:大島 慶一郎 (極域大気海洋学講座 助教授)
題 目:オホーツク海の海洋循環及び太平洋との海水交換 \\ Circulation of the Okhotsk Sea and its water exchange with Pacific Ocean
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オホーツク海の海洋循環及び太平洋との海水交換 \\ Circulation of the Okhotsk Sea and its water exchange with Pacific Ocean (大島 慶一郎) 発表要旨 :
今回は新M1を多少意識して、海の流れを測る方法の紹介と、海洋大循環論の基礎で ある西岸境界流・スベルドラップバランスの力学の紹介も交えて話をする予定である。 オホーツク海は大気と接した水が北太平洋では唯一中層(400-800m)まで運ばれ る海域で、グローバルな視点でも大気と海洋の熱や物質交換にとって重要な海域であ る。しかしながら、冷戦時代までは観測が非常に限られていて、海の循環さえよくわ かっていなかった。本セミナーでは、日露米共同オホーツク海観測(*1)によって明ら かになってきたこの海の循環と太平洋との海水交換の実態を紹介するとともに、これ らの流れの駆動機構・力学についても議論する。 流れを測る観測としては、係留系及び海底設置式でのADCP(Acoustic Doppler Current Profiler)等による長期連続オイラー型の観測と、表層アルゴスドリフターと中層フ ロートによるラグランジェ型の観測の両方を行った。観測の結果、オホーツク海中央 から北部にかけては、反時計回り(低気圧性)の循環が卓越し、特に西岸の樺太沖に は流量年平均約7Svに及ぶ強い南下流、東樺太海流が存在することが明確になった。 この流量は対馬暖流の約3倍で、縁海の流れとしてはかなり大きなものである。一方 、南部の千島海盆では、時計回りのメソスケール渦が充満している。 中北部の反時計回り循環は、正の風応力カールによる風成循環で、東樺太海流はそ の西岸境界流であることを提案する。内部領域での海洋構造はスベルドラップバラン ス(*2)を示唆する傾圧構造になっている。南部の時計回りのメソスケール渦は千島海 峡での大きな潮汐混合によって誘起される傾圧不安定によることを提案する。 オホーツク海と太平洋の海水交換に最も重要な海峡であるブッソル海峡で、初めて (潮汐成分と平均成分を分解して)海峡を横断する面での流出入をLowered ADCP繰り返し観測により計測することに成功した。観測結果は、この海峡では正味と して約9Svの流出があること・二層的な海水交換・潮汐残差流的構造を示している。 (*1:戦略オホーツク海氷プロジェクト(代表若土正暁)のサポートのもと、1998-20 01年計4回、ロシア船クロモフ号により大きな航海観測が行われた。) (*2:風成循環論では、西岸以外の内部領域では、風応力カールと南北流による惑星 渦度変化がバランスする。)
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