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第 133 回 大気海洋圏物理系セミナー のおしらせ

日 時: 5月 6日(木) 午前 9:30
場 所:地球環境科学研究科 2階講堂

発表者:近本 めぐみ (気候モデリング講座 D3)
題 目:オパールの沈降粒子フラックスの突然変化に対する海底堆積層の応答

発表者:池田元美 (気候モデリング講座 教授)
共著者:セルゲイ・シュティリン、アレックス・マクシュタス、山口裕康、山田あけみ、池田隆美
題 目:北極圏:移り変わる20世紀から新世紀へ \\ The Arctic: forecast of the new century from the 20th century data

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オパールの沈降粒子フラックスの突然変化に対する海底堆積層の応答 (近本 めぐみ) 発表要旨 :

  
 気候変動に対する海底堆積過程の役割の一つは、 
 堆積層内の沈降粒子の再溶解過程を通して、 
 海水中の溶存物質濃度を変化させることである。 
 鉛直一次元堆積モデルは、 
 海底堆積層から海水への溶存物質量を定量的に評価できる点で、 
 有用な研究手法として用いられてきた。 
 しかしながら、これまでのモデル研究では、 
 表層10cmの堆積過程に着目しており、 
 それより下層での堆積過程を取り扱っていなかった。 
 モデルの再現性に制約があったうえに、 
 堆積層表層しか生物撹拌や溶解反応など 
 が活発に起こらないと考えられてきたからである。 
 一方で、気候変動に伴い海水環境や生物生産が非定常状態である場合には、 
 10cmより下層で堆積物の溶解反応が起こりうるともいわれていた。 
  
 本研究では、長時間積分に対しても数値拡散を起こさない移流スキームを導入し、 
 新しい鉛直一次元堆積モデルを開発した。 
 これにより従来のモデルでは不可能であった長い海底コアが再現できるようになった。 
 このモデルを用いて、 
 オパールの沈降粒子フラックスを枯渇させた場合、 
 従来の堆積層を10cmに限定した鉛直一次元堆積モデルで 
 堆積層の応答を正しく評価できるかについて議論した。 
 100cmの深さに取った鉛直一次元堆積モデルによる実験結果と、 
 10cmの堆積モデルの応答とを比較したところ、 
 沈降粒子が枯渇した後、 
 10cmの堆積モデルにおける応答時間は約1/3になり、 
 溶解量も過小評価していた。 
 この原因として、堆積層での溶解に伴い、 
 下層から過去に堆積したオパールが活発に表層へ移流され溶解している現象を、 
 10cmの堆積モデルでは全く表現できていないことが挙げられる。 
  

北極圏:移り変わる20世紀から新世紀へ \\ The Arctic: forecast of the new century from the 20th century data (池田元美、セルゲイ・シュティリン、アレックス・マクシュタス、山口裕康、山田あけみ、池田隆美) 発表要旨 :

  
  地球温暖化は北極圏でもっとも顕著に現れると言われるが、気温、海氷など 
 温暖化を直接表現する量は、1940年代の温暖な時期があり、それとは別に 
 90年以降の温暖化が進行中であることを示している。一方、大気大循環は極 
 渦の強化があるものの、10年周期程度の北極振動とよばれる極渦変動が目立つ。 
 それに加え、雲量を見ると、海氷アルベド・フィードバックで温暖化が進むほ 
 ど単純ではなく、雲からの下向き長波放射も重要である。また、ゾンデ・デー 
 タが示す大気境界層からは、温暖化にともなって成層圏の寒冷化が進んでいる 
 とばかりは言えない。海洋内部の変動を見るには水温・塩分データが望ましいが、 
 そのデータは公開されていないので、海洋化学データに頼らざるをえない。 
 その制限下で、ようやく海洋内部が大気の10年周期変動に応答しているらしい 
 ことがわかってきた。これらの情報を集約し、また数値モデルも利用して、 
 北極圏の過去を解明し、将来を予測する試みを発表する。 
  
 The widely accepted prediction tells that global warming will be the  
 most remarkable in the Arctic, while air temperature and sea ice cover  
 show an earlier warm period during 1940s, in prior to the current warming  
 after 1990. The Polar Vortex has been intensifying in the atmosphere,  
 along with significant decadal oscillations, which are called the Arctic  
 Oscillation. The valuable data of cloudiness collected through Russian  
 North Pole stations exhibit that the warming is attributed to larger  
 downward longwave radiation from higher cloudiness as much as ice-albedo  
 feedback. The atmospheric boundary layer, which was observed by radiosonde,  
 does not simply reflect cooling in the stratosphere as a result of global  
 warming. We wish we could use ocean temperature and salinity date to reveal  
 ocean interior variability, although those data are not distributed. Hence,  
 we have to rely on marine chemistry data and come to show oceanic responses  
 to the decadal Arctic Oscillations. In the seminar, we will compile all  
 available information and report you our try  
 to predict the future in the 21st century. 
  

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連絡先

川島 正行 @北海道大学大学院地球環境科学研究科
大気海洋圏環境科学専攻 物理系
mail-to:kawasima@lowtem.hokudai.ac.jp / Tel: 011-706-6885