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第 127 回 大気海洋圏物理系セミナー のおしらせ
日 時: 11月 13日(木) 午前 9:30
場 所:低温科学研究所 新棟 3階 講堂
発表者:新井 健一郎 (極域大気海洋学講座 D3)
題 目:大阪平野に出現する降水システムの観測的研究
発表者:安田 延壽 (東北大学大学院理学研究科 教授)
題 目:植生からの蒸散とその仕組み、気候への影響
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大阪平野に出現する降水システムの観測的研究 (新井 健一郎) 発表要旨 :
地形性豪雨は日本国内でよく研究されているテーマであり、これまで尾鷲や九州な どの豪雨多発地域では複数のドップラーレーダにより降水システムの立体構造を探 る観測が行なわれてきた。一方、大阪湾から京都府南部に至る地域は、年間降水量 が比較的少ないながらも、地形性豪雨、気流の収束やシアーラインが発生する場所 として知られていたが、複数のドップラーレーダを用いた観測は行なわれていなか った。この地域は一大人口密集域であり、防災上の観点からも局地的擾乱の解明は 重要であるが、アメダスなどの通常の気象観測網では海上や上空の気流分布が分か らず、局地的降水現象の立体構造の把握は不十分であった。そこで、我々のグルー プでは、大阪平野を一望する山地にドップラーレーダを設置し、関西空港に設置さ れている気象庁の空港気象ドップラーレーダと協同して、大阪平野周辺に豪雨をも たらすメソスケール降水システムの観測を行なった。観測期間は1998年から2000年 までの梅雨期、夏期が中心である。 この地域での代表的な局地的降水現象としては、大阪平野北部を流れる淀川に沿っ て活発なレインバンドが停滞し、局地的大雨をもたらす「淀川チャネル型大雨」が 挙げられるが、観測期間中に捉えた同様の降水現象についてデュアルドップラー解 析を行なった。レインバンドを構成する降水セルの下層では、レインバンドの南側 (大阪湾)から北側(北摂山系)に向かう風が見られ、上昇流域の多くはレインバンド 北側に位置していた。レーダで捉えた降水エコーの出現地点は六甲山地付近でほぼ 固定されていたが、エコー強度のピーク地点は時間経過と共に風下側に階段状に移 動する傾向が見られた。また、レインバンドの強弱は紀伊水道のアメダス風の強弱 パターンと一定の時差を置いて対応していた。これらの事実は、大阪湾上を吹走す る暖湿気流が六甲山地の地形の強制によって上昇し、降水セルが次々と発生して中 層の風により移動することでレインバンドが形成されることを示唆する。 一方、2000年の夏に多く観測された熱雷について調べたところ、生駒山地の存在が その東西での気象環境にコントラストを生じさせることによって、熱雷などのメソ スケール対流システムの発達と伝播に影響を与えていることが明らかになった。
植生からの蒸散とその仕組み、気候への影響 (安田 延壽) 発表要旨 :
日本の森林地帯と多種の陸面からの蒸発散量の評価、森林蒸散量がなぜ多いか、 および気候への影響について考える
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