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第 122 回 大気海洋圏物理系セミナー のおしらせ

日　時： 5月 29日(木) 午前 9:30
場　所：地球環境科学研究科 2階講堂

発表者：時長 宏樹 (大循環力学講座 D2)
題　目：中高緯度海流フロント域の海面水温分布に対する下層大気循環の応答

発表者：河村 俊行 (極域大気海洋学講座 助手)
題　目：海氷成長におよぼす積雪の寄与

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中高緯度海流フロント域の海面水温分布に対する下層大気循環の応答 (時長 宏樹) 発表要旨 :

  
  中高緯度帯における海盆スケールの海面水温分布は大気下層の風速が強い(弱 
 い)ところで水温が低い(高い)という空間的特徴を示している。これは風速が 
 強(弱)いところで海面での蒸発冷却が強(弱)められるという大気から海洋への 
 強制が中高緯度帯において支配的であることを意味している。そのため、中高 
 緯度における海洋から大気への強制に関してはいまだ不明な点が多く、本研究 
 では近年急速に普及してきた高解像度衛星データと従来からの船舶やブイなど 
 による海上気象要素の観測データを用いて、中高緯度の海面水温分布が大気下 
 層の風速場に与える影響について調べた。 
  
   解析領域とした南大西洋のアルゼンチン沖(30−50S, 70-40W)では、極域か 
 らのマルビーナス海流(寒流)が大陸棚の東端に沿って北上しているのに対し、 
 沖合では赤道域からのブラジル海流(暖流)が南下しているため、その冷水域と 
 暖水域の間には明瞭な海面水温フロントが形成されている。それに対し、海上 
 風速場は冷水側で風速が弱く、暖水側で風速が強いという対応関係を示してい 
 る。これは大気から海洋への強制によく見られる海面水温と風速の関係(風速 
 が加速されることによって蒸発冷却がおこる)とは明らかに異なっており、海 
 面水温が風速場に影響を及ぼしていることを示唆している。さらに COADS か 
 ら得られた海面水温と海上気温の差の水平分布を調べたところ、冷たいマルビー 
 ナス海流上では大気下層が安定であるのに対し、暖かいブラジル海流上では大 
 気下層が不安定となっていることが分かった。大気下層が安定な海域では鉛直 
 混合が起こりにくいため海上風の加速が小さいのに対し、大気下層が不安定な 
 海域では鉛直混合が起こりやすいため、大きい運動量を持つ上層の空気が下層 
 に運ばれて海上風を加速していることを示唆している。 
  

海氷成長におよぼす積雪の寄与 (河村 俊行) 発表要旨 :

  
    海氷は極地の大気−海洋間の相互作用に多大な影響をおよぼす。海氷の存在は表面  
 のアルベドを増大させ、大気と海洋の界面を通しての熱・水蒸気・運動量の交換を制  
 御する。また、海洋への塩の配分を支配する。したがって、海氷の変動は地域的ばか  
 りでなく、全地球的の気候に多大な影響をもたらす。年間を通しての海氷の諸特性を  
 知ることは、極地の環境に対する海氷の影響を理解するのに重要である。 
    海氷の成長・構造に関する観測研究は北極海の沿岸域で行われてきた。1980年代に  
 は南半球のウェッデル海において精力的に観測が行われるようになってきた。その結  
 果、同海域の海氷が北極域の海氷とは異なる性質を持つことが明らかになった。それ  
 らの海氷は北極域の海氷に比べ、予想外に薄くて塩分が多く、その構造は粒状の氷  
 (granular ice)が多く複雑であった。 
 その後のウェッデル海以外の海域での観測でも類似の結果が得られた。また、海氷成  
 長におよぼす積雪の寄与が大きいことも示された。従来海氷上の積雪は断熱材として  
 の作用をし、海氷の成長を抑制すると考えられてきた。しかし、積雪が関与する海氷  
 成長過程では、成長を促進している可能性があることが指摘された。この成長は表面  
 での現象であるため，リーモートセンシングの信号に大きな影響を与え、重要である。 
  
 　発表では、まず南極昭和基地周辺のリュツォ・ホルム湾内で得られた観測結果か  
 ら、海氷成長におよぼす積雪の寄与（特に積雪の融解が関与する成長過程）について  
 述べ、次に南極の他の海域および北半球のバルト海での同様な海氷成長の結果を示す。 
  

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