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第 117 回 大気海洋圏物理系セミナー のおしらせ
日 時: 11月 28日(木) 午前 9:30
場 所:低温研新研究棟 3 階講堂
発表者:深町 康 (極域大気海洋学講座 助手)
題 目:長期係留観測データを用いたサハリン東岸沖における高密度陸棚水の流量の見積もり
発表者:江口 菜穂 (気候モデリング講座 D3(京大RASCに委託中))
題 目:季節内変動における上部対流圏水蒸気と絹雲分布の特徴
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長期係留観測データを用いたサハリン東岸沖における高密度陸棚水の流量の見積もり (深町 康) 発表要旨 :
オホーツク海の北西陸棚域では、冬季の海氷の生成に伴って高密度陸棚水が生成さ れる。この高密度陸棚水は、北太平洋とその周辺域の表層で生成される水塊として は最も高密度のもので、オホーツク海から北太平洋の中層へ広がって行くため、大 気からの熱や二酸化炭素などの物質を中層へ輸送する重要な役割を担っている。こ のような重要性のために、高密度陸棚水の流量については、これまでに水温、塩分 、フロンなどのデータを使って、間接的に見積りがなされて来た。本研究では、 1998-2000 年に日・露・米の国際共同観測の一環として行われた長期係留観測によっ て、北西陸棚域の下流側であるサハリン東岸沖で得られた流速、水温、塩分の連続 データを用いて、高密度陸棚水の流量を初めて直接的に見積もることを試みた。そ の結果、流量には大きな経年変動が存在することが明らかになった。この経年変動 は、海氷生成量の違いに起因していることが考えられる。
季節内変動における上部対流圏水蒸気と絹雲分布の特徴 (江口 菜穂) 発表要旨 :
大気中の水蒸気は強力な温室効果気体として知られ、特に上部対流圏における 水蒸気量は微量ではあるが外向き赤外放射量 (Outgoing Longwave Radiation : OLR) を大きく変化させるといわれている (Udelhofen and Hartmann,1995)。 また近年、熱帯圏界面付近に形成される絹雲が対流圏から成層圏へ入り込む水 蒸気量をコントロールしていることが示唆されている (Boehm and Verlinde, 2000)。このため対流圏、成層圏の気候を考える上で、上部対流圏付近の水蒸 気、絹雲の分布とその変動の理解が必要とされている。しかしその存在量は対 流圏界面直下で数〜数10ppmvと小さく、観測が非常に困難であるため観測デー タが少なく、その分布と変動についてはよくわかっていない。その結果、物理 過程をもとに見積もられている客観解析データ等の水蒸気では、実際の分布、 変動を再現しているとはいえない状況である。 そこで本研究では衛星観測から得られた上部対流圏の水蒸気データを用い、特 に熱帯域で顕著な変動である季節内変動に伴う上部対流圏水蒸気と絹雲の変動 について議論する。 上部対流圏水蒸気の季節内変動に着目した過去の研究では、観測データの制約 から 215hPa (熱帯域で高度約12km) 水平断面での議論が中心であった。本研 究では連続してデータが取得された期間(1991/9-1993/4)にみられた5例の東進 群を合成し、その鉛直構造に着目し解析を行った。その結果対流をともなった 大循環場の東進による水蒸気場は対流からの水蒸気供給、さらに水平風による 影響を強く受けることが示唆された。
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