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第 114 回 大気海洋圏物理系セミナー のおしらせ

日 時: 10月 31日(木) 午前 9:30
場 所:低温研新研究棟 3 階講堂

発表者:吉成 浩志 (科学技術振興事業団)
題 目:風応力場の変動によって作られる黒潮流 量の経年変動 (II) -- 観測値との比較検討実験 --

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風応力場の変動によって作られる黒潮流量の経年変動 (II)
-- 観測値との比較検討実験 --(吉成 浩志) 発表要旨 :

  
   一昨年度から、戦略的基礎研究「黒潮変動予測実験」の一環として、風応力 
 場の変動によって生じる黒潮流量の経年変動についての考察を数値実験的立場 
 から行っている。前回の実験発表(I)では、現実海底地形(ETOPO5)を採用した 
 OGCM(GFDL:MOM2)を使ってHINDCAST実験--NCEP/NCAR再解析月平均風応力データ 
 を用いて1960-1999年間のモデル駆動結果より、黒潮流量の時間変動を計算; 
 及びFORECAST実験--黒潮流量の将来予測可能性を探る為、HINDCAST実験で得ら 
 れた19XX年のデータを初期値として、19XX+3年までの流量計算を19XX年の風応 
 力のみを用いて実施;の結果を紹介した。東シナ海に位置するPNライン(長崎 
 海洋気象台)を通過する流量については、両実験は概ね良い一致を示し、モデ 
 ルにおける黒潮流量の予測可能性を高めた。 
  
   今回はHINDCAST実験で得られた黒潮流量の経年変動の妥当性を検証する為、 
 観測データとの比較を行った。使用するデータは、PNラインを通過する値; 
 700dbar基準地衡流量と、足摺岬沖に位置するASUKAラインを通過する値; 
 1000m以浅の「絶対地衡流量」である。 
  
   PN, ASUKAそれぞれのラインを通過する、HINDCAST実験及び観測データから 
 の流量時系列を見ると、PNラインでは両者の変動傾向はあまり良く一致せず、 
 1990年代からは大きく異なる傾向を示した。ASUKA ラインでの比較では、両者 
 の変動は大きく異なった。 
  
   これらの結果は、HINDCAST実験(数値モデル)による流動場の再現過程におい 
 て若干の問題があった事を示唆する。その1つとして、本実験における海洋中 
 の流量変動を生じさせる外力は風応力のみであることから、NCEP/NCAR再解析 
 月平均風応力データに何らかの問題がある可能性が考えられる。 
  
   そこで流量変動不一致の原因が本当にNCEP/NCAR再解析データの使用に起因 
 するのかどうか調べる為、別の風応力データを使用して再度HINDCAST実験を行 
 う。今回はECMWF再解析風データを採用した。ECMWF再解析データには風応力デー 
 タは含まれていないので、適切な変換式を用いて風応力に変換する必要があり、 
 この事が起因して先のHINDCAST実験とは異なる結果を示す可能性も考えられる。 
 詳細な解析結果については講演時に紹介する。 
   

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連絡先

深町 康 @北海道大学大学院地球環境科学研究科
大気海洋圏環境科学専攻 物理系
mail-to:yasuf@lowtem.hokudai.ac.jp / Tel: 011-706-7432