****************************************************************************************************************

第 113 回 大気海洋圏物理系セミナー のおしらせ

日 時: 10月 17日(木) 午前 9:30
場 所:低温研講義室 研究棟2F
(いつもと場所が異なります!!!)

発表者:谷本 陽一 (大循環力学講座 助教授)
題 目:環大西洋10年スケール変動に関わる2つの過程
風-蒸発-海面水温フィードバックと下層雲-海面水温のフィードバック

発表者:舘山 一孝 (低温研付属流氷研究施設 日本学術振興会特別研究員)
題 目:衛星搭載マイクロ波放射計を用いた海氷厚の推定

****************************************************************************************************************

環大西洋10年スケール変動に関わる2つの過程
風-蒸発-海面水温フィードバックと下層雲-海面水温のフィードバック (谷本 陽一) 発表要旨 :

  
  大西洋の10年スケール変動について調べるために,海面水温・海面気圧偏差場に対 
 し経験的直行関数(EOF)解析を施した.両半球間で相関するシグナルのみを人為的 
 に取り出してしまうことを避けるために,対象海域を北大西洋と南大西洋海域に分け 
 て行っている.10年スケール海面水温変動場における第1主成分は北半球側で3つの 
 活動中心域,南半球側で2つの活動中心域をもつ.そのうち,赤道を挟み緯度15度付 
 近に見られる活動中心域は緯度方向の双極子構造を示している.海面気圧変動場にお 
 ける活動中心域は海面水温のものに対し極方向にずれていて,緯度30度付近に見られ 
 る.北大西洋における海面気圧偏差は順圧的な変化の一部であり,熱帯域における海 
 上風の変化に大きく寄与している. 
  2つの変数に対する2つの海域の変動場(総計4)は統計的に独立でありながら, 
 それぞれ場でのEOFに対応する時係数は互いによく相関している.このことは両半球 
 にまたがる環大西洋10年スケール変動の存在を示唆している.客観解析より求められ 
 たより長期間の海面水温変動場に対する同様の解析もこの変動が20世紀全般にわたり 
 存在していたことを示唆している. 
  EOFの時係数に基づいた北大西洋の海上風,海面熱フラックス偏差場に対する合成 
 図解析は海面水温偏差の形成に潜熱放出が主要な働きをしていることを示している. 
 一方,南大西洋の合成図解析では海上風のシグナルが空間的に組織化されておらず, 
 海面気圧偏差とも地衡流バランスを満たしていない.人工衛星観測による海上風との 
 比較によると,船舶観測の誤差要因は観測頻度が小さいことによるサンプリングエラ 
 ーであることを示唆している. 
  赤道を挟む海面水温の双極子構造に伴い,冷たい(暖かい)水温上では下層雲量の 
 増加(減少)が見られる.下層雲の変化と大気下層の収束発散とは関連が見られず, 
 これは赤道付近の対流雲とは異なった特性である.下層雲の変化は太陽放射を遮るこ 
 とにより局所的な海面水温偏差の符号を維持している. 
   

衛星搭載マイクロ波放射計を用いた海氷厚の推定 (舘山 一孝) 発表要旨 :

  
 近年,地球温暖化傾向が社会的に問題になり,北極海の海氷の薄氷化が 
 注目され始めている(Rothrock et al., 1999).大気−海洋相互作用に  
 おいて,海氷は熱・物質交換を制限する重要な役割を持っており,海氷の薄氷化  
 が地球環境に与える影響は多大である.こうした背景で,我が国は身近に凍る  
 海であるオホーツク海を抱え,海氷を研究する場に恵まれてきたが,オホーツ  
 ク海全域の氷厚変動は明らかになっていない.本研究は,唯一過去にさかのぼっ  
 て現在の氷厚と比較することの出来る衛星データ,特に昼夜・天候を問わず毎  
 日のデータが存在するマイクロ波放射計データに着目し,船舶の実測データと比  
 較することで,海氷の厚さ情報の抽出を試みた. 
  
  キーワ−ド: マイクロ波放射計 海氷 氷厚  
  

-----
連絡先

深町 康 @北海道大学大学院地球環境科学研究科
大気海洋圏環境科学専攻 物理系
mail-to:yasuf@lowtem.hokudai.ac.jp / Tel: 011-706-7432