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第 112 回 大気海洋圏物理系セミナー のおしらせ
日 時: 9月 26日(木) 午前 9:30
場 所:地球環境 2F講堂
発表者:池田 元美 (気候モデリング講座 教授)
題 目:海面高度計データの黒潮モデルへの同化
発表者:清水 大輔 (極域大気海洋学講座 D3)
題 目:オホーツク海の循環の数値シミュレーション
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海面高度計データの黒潮モデルへの同化 (池田 元美) 発表要旨 :
海洋データ同化は、予測モデルの初期化、海洋場の力学的補間、不確定パラメー タの決定などを目的にして、近年さかんに試みられている。本発表では、黒潮 の準地衡流モデルに海面高度計データを同化し、蛇行は渦などの中規模変動を 再現する試みを報告する。とくに表層データを同化して海洋下層の場を再構築 することが可能か、またその下層場に対する海底地形の影響について所見を述 べる。
オホーツク海の循環の数値シミュレーション (清水 大輔) 発表要旨 :
オホーツク海の循環を調べるため、数値モデルを用いた実験を行なっている。 モデルには鉛直方向がσ座標であることを特徴とする Princeton Ocean Model (POM) を採用した。オホーツク海の循環は、大きく分けて風成循環と、熱塩循 環とに分けられる。熱塩循環については、冬季の海氷生成に伴う高塩分水の供 給と、秋季に最大となるアムール川からの淡水流入の影響が大きいと考えられ る。今回は、年平均気候値、月平均気候値、各年各月平均値の風応力によって 駆動した結果と、アムール川からの淡水の流入を与えた場合の結果について発 表する。モデルは、現実的な地形を含み、グリッド間隔は緯度、経度方向とも に 1/6 度とした。全ての海峡は閉じ、他の海洋との海水の交換は無視する。 オホーツク海においては、年平均気候値から求めた風応力のカールはほぼ全域 で正である。このため、内部領域では反時計回りの循環となり、東樺太海流は 西岸境界流として樺太東岸に再現された。また、東樺太海流は顕著な季節変動 を示し、その流量は概ねスベルドラップ流量で説明できる。一方季節変動の位 相はスベルドラップ流量より2から3カ月遅れていることがわかった。 次に、東樺太海流の経年変動を調べた。各月のスベルドラップ流量の標準偏差 は、冬季に特に大きく、およそ 10 Sv になる。数値計算の結果得られた東樺 太海流の流量は、スベルドラップ流量と良い対応をしていることがわかった。 そこで、ラグ相関を取ったところ、スベルドラップ流量からちょうど一月遅れ で相関係数が 0.62 で最大値となった。 最後にアムール川からの流入を再現した計算を行なった。その結果、樺太の東 岸にそって低塩分水が南下し、11月ごろに北海道沿岸に達することがわかった。 この結果は、潮位計、海洋観測データから求められた低塩分水の到達時期 (Watanabe,1963b; Itoh and Ohshima,2000) と矛盾しない。
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