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第 111 回 地球環境科学研究科 大気海洋圏環境科学専攻物理系セミナー のおしらせ
日 時:7月 11日(木) 午前 9:30
場 所:地球環境科学研究科 管理棟 2階 講堂
発表者:谷口 博 (気候モデリング講座 D3)
題 目:赤道域シアー流中で発生する不安定モードの解釈
発表者:伊藤 頼 (大循環力学講座 D3)
題 目:レンズ渦の南下
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赤道域シアー流中で発生する不安定モードの解釈 (谷口 博) 発表要旨 :
赤道域上部成層圏では, パンケーキ構造と呼ばれる東西非一様な擾乱が存在 し, 慣性不安定により発生していると考えられている(Hitchman et al.,1987 等). しかし, この東西非一様擾乱を東西一様ないわゆる慣性不安定と認識し て良いかどうかは, 子細に検討されてこなかった. この考察を行うことを目的として, これまで赤道域シアー流中で発生する不 安定モードの振舞いについて調べてきた. その結果 Lamb パラメータ(E)の値 により不安定モードの水平構造は, 3つのタイプに分類できることがわかった. 今回は, これまでに分類された不安定モードのそれぞれが, 物理的に性質の 異なるものであるかどうかを検討するため, 中立波の共鳴(Cairns,1979; Iga,1993,1997,1999 等)という観点から考察を行う. これまでに得られた結 果は, 以下の通りである: 1. 不安定モードが存在しない -2 < logE < -1 の領域では, 正負の擬運動量 をもつモードの交差はみられない. 2. 東西非一様モードのみが存在する -1 < logE < 1.2 の領域では, 正負の擬 運動量をもつモードの共鳴で不安定が発生する. これらの正体は, 赤道ケ ルビン波と連続モードである. 3. 慣性不安定モードが発生する(と考えられる) 1.2 < logE の領域では, 最 大不安定モードの分散曲線が連続モードの中に隠れてしまい, 共鳴を起こ す中立モードの同定が困難に(よくわからなく)なる.
レンズ渦の南下 (伊藤 頼 ) 発表要旨 :
海洋中には様々な渦が存在する。黒潮や Gulf Stream から切離して生成 した 100km スケールの渦や、ジブラルタル海峡から流出してきた地中海 水を起源とする北大西洋中層の Meddy と呼ばれる 20-30km の渦が存在 している。特に Meddy は強い南下傾向を持つことで知られている。 このような高気圧性渦の南下傾向に関して、渦の上下層のポテンシャル 渦度のアノマリが寄与している可能性が、Morel & McWilliams (1997)、 Sutyrin & Morel (1997) の研究で検討されてきた。 これまでの研究では、2.5層β平面プリミティブモデルを用い、1層目の レンズ渦に対する2層目の影響を調べてきた。初期にレンズ渦が西に 進むことによって2層目に渦対が生成され、レンズ渦が2層目のポテン シャル渦度アノマリを従えて南下する事が分かった。 Benilov(2000)は、2層β平面プリミティブモデルを用い、1層目のレンズが 西進を始めるものの、レンズと2層目のポテンシャル渦度アノマリが東西に ずれない程度の時間スケールにおける、南下速度の時間発展を求めた。 この時間スケールにおいては、レンズの南下速度は時間に比例して増大 していく。 2.5層数値モデルにおいては、レンズの南下速度は初期に時間に比例して 増大していくが、渦の半径程度南下したあたりで南下速度の増大は止まる。 これは、Benilov(2000)では考慮されていない、レンズの2層目のポテン シャル渦度アノマリに対する西へのシフト、及びそれに伴うアノマリの レンズ領域からの漏出が原因であると考えられる。
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