****************************************************************************************************************

第 98 回 大気海洋圏物理系セミナー のおしらせ

日 時: 9月 20日(木) 午前 9:30
場 所:低温研 新棟3階講堂

発表者:豊田 威信 (極域大気海洋学講座 助手)
題 目:オホーツク海南部の海氷に及ぼす積雪の寄与について

発表者:大村 纂 (スイス連邦工科大学 教授)
題 目:Greenhouse effect and the earth's climate -- Past, Present and Future

****************************************************************************************************************

オホーツク海南部の海氷に及ぼす積雪の寄与について (豊田 威信) 発表要旨 :

  
 積雪の熱伝導率は海氷に比べて小さいため、一般に海氷上の積雪は海氷の下面 
 結氷量を抑制する働きをする。しかし、積雪量が十分多く積雪─海氷境界面が 
 海面近くまで下がるような状況では、境界面を通して積雪に海水がしみ上がっ 
 て氷化することによりsnow iceが形成され、海氷の成長を助長する役割を果た 
 すことが知られている。海氷の成長履歴の一過程として後者の特徴を定量的に 
 見積もることは重要であるものの、snow iceは通常の結晶構造や塩分解析では 
 判別が困難なため、オホーツク海に関してはこれまで分かっていなかった。そ 
 こで本研究では、1996〜2000年にかけて現場で採取した海氷サンプルの酸素安 
 定同位体比を測定することにより、海氷に見られるsnow iceの特徴を定量的に 
 見積もってみた。過去の研究から、南極域で積雪の多い海域ではsnow iceの比 
 率が24%に達しているという報告もある(Jeffries et al., 1997)。オホーツク 
 海の状況との比較も興味深いと思われる。 
  
 解析の結果、snow iceはa)全47サンプル中、17サンプルに検出され(36%)、b) 
 全氷厚に占める割合は10.2%であること、c)表面付近に留まらず海氷内部にも 
 見られることなどが分かった。c)は海氷が発達する過程でrafting等の力学的 
 過程が重要であることを示唆している。また、snow iceの密度、塩分の中央値 
 は各々815kg/m^3、3.34psuであり、海水起源の海氷(861kg/m^3, 3.61psu)に比 
 べてともに若干低い値を示した。 
  
 更に、同位体比の測定値と保存式をもとに計算を行なった結果、snow ice中の 
 積雪の寄与は8.7%と見積もられた。従って、積雪が海氷全体に占める割合は約 
 1%と見積もられる。この値は南極域で従来見積もられた値のおおよそ下限に相 
 当する。なお、この計算においては結氷の際の見かけの分別係数に対する感度 
 が高い。ここでは統計分布から推測した値(1.76±0.02)を用いたが、値の妥当 
 性を調べるため、静穏な状況で結氷させる実験も行なった。その結果、ほぼよ 
 い一致が見られたが、結氷速度などによって異なる値を取るようである。今後、 
 様々な条件でさらにきちんと調べてゆく必要があると思われる。 
  

Greenhouse effect and the earth's climate -- Past, Present and Future (大村 纂) 発表要旨 :

  
   The strength of the present greenhouse effect of the earth's climate  
 is often misinterpreted. After presenting the correctly evaluated strength 
 of the present greenhouse effect, the strength of this effect will be  
 evaluated for the ice age, Holocene, the present and the enhanced future 
 greenhouse climate. The present problem of the GCM atmospheric  
 boundary layer will also be discussed. 
  

-----
連絡先

豊田 威信 @北海道大学大学院地球環境科学研究科
大気海洋圏環境科学専攻 物理系
mail-to:toyota@lowtem.hokudai.ac.jp / Tel: 011-706-7431