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第 97 回 大気海洋圏物理系セミナー のおしらせ
日 時: 7月 12日(木) 午前 9:30
場 所:地球環境 2階講堂
発表者:池田 元美 (気候モデリング講座 教授)
題 目:北極海の海氷分布・海洋構造の変動と北極振動・雲との関係
発表者:水田 元太 (大循環力学講座 助手)
題 目:オホーツク海西岸域の係留観測
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北極海の海氷分布・海洋構造の変動と北極振動・雲との関係 (池田 元美) 発表要旨 :
北極域では極渦が変動しながら強化しており、また海氷は変動するものの 減少傾向が顕著である。これらにおいて自然変動および二酸化炭素増加によ る全地球規模の温暖化は、どのような役割をしているのだろうか。最近50 年のトレンド(あるいは長期変動の一部)については、温暖化と拮抗するも のして、数十年周期の極渦変動(北極振動)と北極低層雲の増加が重要であ る。海氷とアルベドのフィードバックで海氷が減少するという、二酸化炭素 増加による温暖化シナリオ以外の原因を究明する作業が必要である。いっぽ う十年程度の周期をもつ自然変動にも同様なメカニズムが働いているが、極 渦と海氷分布の相互作用が重要であることが示唆される。
オホーツク海西岸域の係留観測 (水田 元太) 発表要旨 :
オホーツク海西岸のサハリンに沿っては東カラフト海流とよばれる 南下流があり、水塊や海氷を運ぶといわれている。この海流はオホー ツク海内部の環境を維持するばかりでなく、北太平洋中層水の起源の ひとつといわれる低温高密度水(木谷水)を輸送すると考えられる点 で重要である。しかしながらこれまで東カラフト海流を実際に長期間 観測した例は報告されていない。 戦略的基礎研究オホーツクグループではロシア極東水門気象研究所 、米国ワシントン大学、スクリプス海洋研究所と共同で1998年から 2000年までオホーツク海西岸域で係留観測を行った。本研究ではそこ で得られた流速データについてお話しする。 ほとんど全ての観測期間にわたって、サハリン東岸を等深線にほぼ 沿うように南下する流れが観測された。この南下流は海面から最大 900m深にもおよび、冬に最大となるような顕著な季節変動を示してい た。流れの水平、鉛直分布は季節によって異なる3つのレジームに分 けることが出来る。10月から11月にかけては陸棚上の海面近くに集中 した強い南下流が見られる。その鉛直シアーはアムール川起源と見ら れる低塩分水層にともなう地衡流シアーと一致がみられた。12月から は海面付近の鉛直シアーは弱まり、陸棚斜面上を中心により深くまで 及ぶような南下流がみられる。3月から翌年9月にかけては海底付近に 集中した強い南下流が陸棚斜面上でみられた。この海底に捕捉された 流れは、低温高密度水と時間、場所が一致して存在していた。最後に 南下流の流量を見積もったところ2月に最大値$14*10^6 m^3/s$をとり、 年平均では$7.2*10^6 m^3/s$ であった。
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