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第 107 回 大気海洋圏物理系セミナー のおしらせ
日 時:1月 24日(木) 午前 9:30
場 所:低温科学研究所 新棟 3階 講堂
発表者:内本 圭亮 (大循環力学講座 D3)
題 目:地形に励起されたロスビー波による抵抗
発表者:谷本 陽一 (大循環力学講座 助教授)
題 目:中緯度海面水温変動の海面熱フラックス変動への寄与
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地形に励起されたロスビー波による抵抗 (内本 圭亮) 発表要旨 :
平らでない底の上を流体が流れると底から形状抵抗(応力)を受けることが知ら れている.形状抵抗が重要な働きをしていると言われている海域に南極周極域 がある.南極周極域には,大陸に遮られることなく地球を一周できる緯度帯が ある.亜熱帯循環においては,渦度バランス(スベルドラップバランス)で大枠 が決まっているが,南極周極域では渦度バランスよりも帯状運動量バランスが 重要であるという考え方が主流である.海底地形による形状抵抗が、帯状運動 量バランスの主たるシンクとして働いていると考えられているが,その効果が よく分かっていないため,周極流の流量と風応力の大きさの関係は明らかになっ ていない.本研究においては,非常に簡単な系(底地形は波数 (2,1) のサイン 型,準地衡流β平面水路,風応力は空間一様で curl を持たない,底摩擦は無 視) で形状抵抗の大きさについて調べた.帯状一様東向流 U を固定し,非粘 性定常解を初期値として数値モデルで積分したところ,拡散係数と底地形の振 幅が小さい場合には,U が波数 (2,3) のロスビー波の位相速度と同じ大きさ (以下では(2,3) の共鳴流速と呼ぶ)のところで,形状抵抗の大きさが変わると いう結果が得られた.U が (2,3) の共鳴流速以下では,地形と同じ波数 (2,1) の擾乱のみが大きい線形的な解となり,U が(2,3) の共鳴流速を越える と高次の擾乱も大きい非線形的な解となった.非線形的な解では線形的な解に 比べて形状抵抗が非常に大きい.また,解は初期値依存性がある.線形的な解 は,(2,3) の共鳴流速以上では見られないが,非線形的な解は (2,3) の共鳴 流速以下でも存在することもあり多重解になっている.
中緯度海面水温変動の海面熱フラックス変動への寄与 (谷本 陽一) 発表要旨 :
中緯度における海面水温偏差は特に冬季において数年から10年程度の時間スケー ルで変動している.その偏差場の時空間構造は,海上を吹く偏西風の変動が海 面熱フラックス,南北のエクマン輸送,海洋上層の水温混合の過程を通しても たらされていると考えられている.一方,大気循環場のみでこのような時間ス ケール変動を維持することは一般に難しく,中緯度の海洋側から中緯度の大気 側へ何らかのフィードバックが存在する可能性も指摘されている.しかしなが ら,その過程を観測データから示した研究例はほとんどない. 中緯度における相互作用を観測的データからよりよく診断する目的で,新たに 「線形化された乱流熱フラックスデータ」を作成した.バルク法で求められた 顕熱・潜熱といった乱流フラックスは,風速・気温・海面水温に依存している ため,どの要素がその変動に寄与しているかは一概に言えない.このデータセッ トを使用した解析は,ある特定に海域における海面水温変動がその場の海面熱 フラックス変動に最も大きく寄与しており,さらに大気側のstorm truckの活 動度にも影響していることを見いだした.
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